【タイ・中国】タイや中国での報道によると、タイ・ミャンマー国境の犯罪拠点の存在が明らかになったことをきっかけに、中国人のタイ旅行への不安があらわとなっている。ホテル予約の相次ぐキャンセルがニュースで取り上げられ、長期有効のノービザが犯罪に利用されているという指摘も挙がっている。
タイホテル協会(THA)はこのほど、タイ全国で予約された今月1月のホテル宿泊で、中国人によるものが4500泊以上キャンセルされたと明らかにした。うちバンコクは2000泊以上。タイ旅行を不安視する外国人旅行者は中国人にとどまらないようで、全体で8000泊近くキャンセルされているという。
中国からのタイへの渡航に関しては、インドネシア系格安航空タイ・ライオン・エアが1月15日、個人予約およびチャーター便のキャンセルが急増していると発表していた。この時期は通常、旧正月に伴う長期休暇で中国人旅行者が増える。
急減の理由は、中国人俳優が今月初めにタイ・ミャンマー国境で拉致された事件。犯罪拠点はミャンマー側にあるものの、スワンナプーム空港からタイ北部国境に移動して不法越境するため、タイも危険というイメージが植え付けられた。複数の中国人が同様のルートでミャンマーに連れ去られたと見られ、中国では一連の事件を巡り、タイの地元警察の協力もしくは黙認なしに犯罪拠点が外国人を拉致することは難しい、といった情報が流れているという。一方、タイ警察は中国人俳優がミャンマーからタイに再入国した際、自らの手柄としてアピールしていた。
このような状況の中、タイ政府観光庁(TAT)のターパニー・キアットパイブーン総裁は、中国人に対する60日間のビザ免除(ノービサ)措置が犯罪に悪用されていると発言した。中国人旅行者の平均的なタイ滞在が7~10日間であることから、ノービザの有効期間を15日間に短縮しても旅程に影響を与えないとし、政府に提言するという。
タイ観光業にとって中国からの旅行者は最重要であり、政府が自ら誘致に乗り出している。しかし、全旅行者に対する割合が高いこともあり、中国人旅行者を巻き込む事件や事故が多く発生。政府はそのつど事後処理に追われている。今回もペートーンターン・チナワット首相が、中国人旅行者に対してタイの安全性をアピールしたと伝えられるが、そのメッセージで安心感を与えられるかは未知とされる。