【タイ・中国】多くの外国人がタイ経由でミャンマー国内の犯罪拠点に連れ去られている疑惑を巡り、今年の旧正月にタイを訪れる中国人旅行者が、当初の見込みより10~20%減少する心配がある。タイ旅行代理店協会(ATTA)のシッサディワット・チワラタナポーン会長が明らかにした。
同会長は、今月に入って起きた中国の俳優シンシン(星星、本名:王星、31)の拉致事件の影響で、旧正月(1月29日)の長期休暇をタイで過ごす中国人旅行者数が減ることは避けられず、「タイ自体が犯罪拠点ではないことを訴えていかなければならない」と述べた。また、「そもそも観光業において、中国人に期待し過ぎ。今回の事件がなかったとしても、中国からの来タイ者数の飛躍的な伸びは見込めなかったかも知れない」と添えている。
中国方面からのタイ渡航を不安視する動きは徐々に見られ始め、香港スターのイーソン・チャンさんがすでに、2月22日に予定していたタイ公演の中止を発表している。「タイを訪れる中国人ファンの安全への考慮」を理由としている。また、香港の治安当局が1月12日、拉致事件の実態を調査するためタイにタスクフォースを派遣することを明らかにした。昨年第2四半期以降、東南アジア地域での香港住民の拉致被害報告が28件挙がっており、一部は未解決のままだという。
タイ北部ターク県メーソート郡とムーイ川で国境を隔てるミャンマー・ミャワディーの特殊詐欺を行う犯罪拠点の存在は以前より噂されていた。2024年11月には「ミャンマーのオンライン詐欺拠点から外国人39人が自力で脱出してタイ国内に逃げのびた」という大手通信社のニュースが世界的に報じられた。翌12月には「14カ国の在タイ大使館が自国民保護の協力をタイに要請している」といった記事をタイ地元紙が掲載している。
今回、シンシンさんがタイ経由で連れ去られて再びタイに戻ってきた事件により、犯罪拠点の実在が広く知られるようになった。タイ警察は中国人俳優を連れ戻したことを自らの手柄として発表しているが、実際は中国政府が犯罪拠点に圧力をかけて解放させたと見られる。シンシンさんは帰国済み。