支持率5割のタイ下院第1党、憲法裁が解党命令か 8月7日判決 

【タイ】議会下院(定数500)第1党で野党のガウクライ党(前進党)の解党をタイ選挙委員会が憲法裁判所に求めた裁判の判決が8月7日に下る。

 憲法裁は今年1月、ガウクライ党が昨年5月の下院選で不敬罪の廃止改正を選挙公約に掲げたことについて、「国王を元首とする民主政体の転覆を図るもの」で違憲だとする判断を下し、ガウクライ党に対し、不敬罪の廃止改正を目指すすべての活動を停止するよう命じた。これを受け、選挙委がガウクライ党の解党を憲法裁に請求した。

 憲法裁は選挙委などと同様に、革新系のガウクライ党と対立する保守王党派の強い影響下にあるとされる。ガウクライ党が憲法裁の命令で解党された場合、ピター前党首ら同党幹部は参政権が10年間剥奪され、ガウクライ党所属の下院議員は党が準備した新党に移籍するとみられる。

 不敬罪はタイ国王夫妻と王位継承者への批判を禁じるもので、違反した場合、1件につき最長15年の禁錮刑が科される。タクシン政権(2001〜2006年)を打倒した2006年の軍事クーデター以降、王党派と民主派の対立が強まり、民主派の活動家らが不敬罪で訴追、投獄されるケースが急増した。

■前身政党は憲法裁が解党

 ガウクライ党の前身はプラユット軍事政権(2014~2019年)下の2018年に設立された新未来党。同党は王室改革、不敬罪の改正、クーデターを繰り返すタイ軍の抜本改革、軍政が作成施行した民主主義を制限する内容の現行憲法の改正などを訴えて、2019年3月に8年ぶりに実施された下院選で81議席を獲得し、第3党に躍り出た。2019年10月には、2連隊の指揮権と予算をタイ陸軍からワチラロンコン国王に移管する緊急勅令の国会採決で唯一反対票を投じた。2020年11月、党首のタナートン氏が下院選に立候補した際にメディア会社の株式を保有していたことが選挙法違反だとして、憲法裁が同氏の下院議員資格をはく奪。翌2020年2月、新未来党が下院選の際にタナートン氏から1億9120万バーツを借り入れたことが1個人からの多額の政治献金を禁じた政党法違反にあたるとして、憲法裁が同党を解党し、タナートン氏ら党幹部16人の参政権を10年間停止した。

 新未来党の支持勢力が新たに立ち上げたガウクライ党は昨年5月の下院選で、不敬罪の廃止改正などを掲げ、151議席(比例代表の得票率36.2%)を獲得して第1党になった。しかし、プラユット軍政が議員を選任した非民選で王党派の議会上院(定数250)と下院の旧与党陣営が不敬罪の廃止改正に強く反発し、ガウクライ党による政権樹立を阻止。ガウクライ党と同じ旧野党陣営で141議席(比例代表の得票率27.7%)を獲得したタクシン元首相派のプアタイ党が旧敵である王党派と手を組み、政権を発足させた。

■ガウクライ、政党支持率49%で圧倒

 タイ国立開発行政研究院(NIDA)が6月14〜18日にタイ全国の18歳以上を対象に実施した世論調査(回答者2000人)で、政党支持率1位はガウクライ党で49.2%(2024年3月調査48.5%)だった。

 2位はプアタイ党で16.9%(同22.1%)、3位は王党派で連立与党第4党のルワムタイサーンチャート党で7.6%(同5.1%)だった。

 「首相として支持する人」の1位はガウクライ党前党首のピター・リムジャルーンラット氏(43)で45.5%(同42.8%)、2位はプアタイ党所属のセーター・タウィーシン首相(62)で12.9%(同17.8%)、3位はタクシン元首相の次女でプアタイ党党首のペートーンターン・チナワット氏(37)で4.9%(同6%)だった。

 

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