【タイ】財務省は、急速に膨らむ公的債務によって財政の緩衝力が失われつつあるとし、経済と公的部門の構造改革を加速し、成長率を潜在水準に近づける必要があると指摘した。公的債務の急増で利払い負担が重くなり、債務対GDP比を悪化させずに借り入れできる財政余地が大幅に縮小したため。
タイのメディアが財務省関係者の話として伝えるところによると、2025年度決算を踏まえて作成した「財政リスク報告書」で中期的な債務持続性を評価した結果、経済・公的部門双方の包括的な構造改革と、厳格な財政健全化への取り組みが不可欠だと結論づけた。
2024〜2026年度の債務持続性分析では、経済成長による構造的な改善効果が大きく低下し、政府が公的債務対GDP比を悪化させずに純借入(元本返済後のネット)を行える財政余地はGDP比1.5%に縮小した。国内の借入環境は安定しているものの、債務残高の高止まりによって利払い負担はGDP比1.5%に達し、従来の債務抑制に寄与していた構造的な緩衝力は事実上失われたという。
財務省は、2027〜2030年度の中期財政枠組みに沿って厳格な財政健全化を進めた場合、経済成長率がコロナ禍後の水準を上回らなければ、債務持続性が損なわれる可能性があると警告。債務の持続性を確保するには、財政健全化と並行して、経済・公的部門の構造改革を加速し、中期的な成長率を潜在成長率に近づけることが不可欠だとしている。
2025年度は、公務員給与、福利厚生、公的福祉など「削減が困難な支出」がやや伸びを抑えたものの、依然として予算の大部分を占め、前年度比3.4%増、純歳出の67.4%に達した。利払い、契約上の義務、公的福祉関連支出も高い伸びが続いている。
タイの公的債務は、コロナ禍対応として政府が総額1兆5000億バーツ(7兆円相当)の緊急借入令を発動したことを契機に急増した。2019年4月時点の公的債務は6兆8800億バーツ(GDP比41.2%)だったが、2026年4月には12兆8000億バーツ(同66.7%)に達し、財政持続性の上限とされるGDP比70%に近づいている。
財務省は2026〜2030年の歳入拡大策として税制改革案も提示。付加価値税(VAT)を現行7%から10%に段階的に引き上げる案で、2028年に1.5ポイント、2030年にさらに1.5ポイント引き上げるとした。VATが10%に引き上げられれば、年間のVAT歳入は3450億バーツ増えると試算。ただ、VAT引き上げは10年以上議論されているものの、いずれの政権も実現できていない。
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