IMF、タイに「公的債務上限60%」復帰を勧告

【タイ】国際通貨基金(IMF)はタイ政府に対し、現在70%に設定されている国内総生産(GDP)比の公的債務上限を、従来の60%に戻すよう勧告した。タイ政府はコロナ禍での大規模財政出動に対応するため上限を引き上げていたが、IMFは「財政余地の回復」が急務だと指摘している。

 タイの公的債務残高は、2025年7月末時点で12兆1200億バーツ。GDP比64.49%に達し、法定上限の70%に迫っている。IMFは「持続可能な公的債務の上限は、安全余地を考慮すればGDP比66%程度に設定するのが妥当」としている。

 債務の内訳は、政府の直接借入が10兆8700億バーツ、国営企業債務が1兆300億バーツ、政府保証付き金融国営企業債務が1587億バーツ、そのほか公的機関債務が602億バーツ。

 コロナ禍以前の公的債務比率は40%を下回っていたが、タイ政府がパンデミック対応で1.5兆バーツを超える借り入れを実施、GDP縮小も重なり2022年に60%を突破した。今後も観光収益の伸び悩みや歳入不足・歳出増加により、さらに上昇する恐れがある。

 上限を70%に引き上げたのは2021年。タイ政府の中期財政計画では当初、2029年度に上限の70%に達すると見込んでいたが、最新の試算では2027年度にも到達する可能性が浮上。国際格付け機関による評価に影響を及ぼす懸念が強まっている。プアタイ党政権が債務返済費の歳入比率上限を35%から50%に引き上げたものの、借入余地を拡大させただけで歳入の増加が伴わず、財政リスクをより高める結果となった。

 IMFは、理論上の債務限界はGDP比77〜87%(中央値82%)と試算しつつも、将来のショックに備えるには「安全余地を含めた上限設定が不可欠」と強調している。

写真:newsclip

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