タイで2月8日総選挙 安保争点化で改革後退、連立の行方が焦点

【タイ】タイで2月8日、下院(定数500)の総選挙が投開票される。小選挙区400、比例代表100の議席を争う今回の選挙では、主要政党の支持が分散しており、いずれの党も単独で過半数(251議席)に達しないとの見方が強い。タイの主要メディアは、当日の投開票後は第1党の行方以上に、連立交渉の組み合わせが政権の帰趨を左右するとみている。

 選挙戦では、安全保障が前面に押し出される一方で、制度改革をめぐる論争は後景に退いている。背景にあるのは、カンボジアとの国境をめぐる緊張の高まり。アヌティン・チャーンウィーラクーン首相率いるプームジャイタイ党は、タイ軍のカンボジア軍への強硬姿勢に対する国民の支持を追い風に、治安と国家の安定を強調する戦略をとっている。

 これに対し、前回の総選挙で若者を中心に支持を集めたプラチャーチョン党の軍、司法、選挙制度の改革を訴える動きは相対的に勢いを欠く。改革派の支持者の間では、選挙後に改革が実現しなかった過去の経験から、政治への期待感が薄れているとの指摘がある。「プラチャーチョン党支持は依然としてトップ」といった報道もみられるが、自ら提言した国民投票が後回しとなって連立を気にする発言がみられたことから、支持は明らかに低下した。ただ単に、「まだ若く政治経験が足りない」という評価もある。

 タクシン・チナワット元首相が実質的な支配者のプアタイ党も、農村部を中心とした組織力を持つが、(元首相の次女の)ペートーンターン前政権での混乱が響いて勢いは限定的。首相候補はヨッチャナン・ウォンサワット氏で、タクシン元首相の甥でソムチャイ・ウォンサワット元首相の息子。党としてチナワット家のイメージを払拭させる方向性を見せていたが、結局は同一族からの首相候補の選出となり、「タクシン元首相を抜きにしては戦えない党」という印象を持たれた。

今回の選挙の構図を形づくっているのはこれら3つの主要政党だが、タイ最古の政党の民主党の動きも注目されている。かつて都市部を中心に強い基盤を持った民主党は、近年は存在感を失っていたが、今回の選挙では一部選挙区で支持回復の兆しがみられる。

総選挙と同時に、憲法改正の是非を問う国民投票が実施される。賛成多数となれば、憲法起草議会の設置など次の制度設計段階に進む政治的な民意の裏付けが与えられるが、憲法の内容が直ちに決まるわけではないとされる。

●タイ首相、次期総選挙の世論調査に不満 「150議席予測は低すぎる」
●タイ次期下院選、首相候補支持率で激戦か 現首相がトップのリベラル派と僅差に

選挙運動中のアヌティン首相 写真:FC Anutinフェイスブックより

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