【タイ】タイの複数メディアが報じるところによると、タイバーツが対米ドルで上昇を続け、輸出企業への影響が懸念されている。バーツ相場は12月15日、1ドル=31.44バーツを付け、2021年半ば以来の水準となった。域内通貨の中でも上昇が目立っており、背景には米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げ方向への転換を示唆し、ドル安が進んだことが主因としてあげられる。
タイ商工会議所は、米国の金融政策が転換期に入り、世界の金融市場や貿易に影響が広がっていると指摘した。コロナ禍後、インフレ抑制を目的に利上げを続けてきたFRBが、インフレ率の落ち着きを受けて利下げに向けた姿勢をより明確にしたことで、ドルが弱含んだという。
ドル安が進んでいるとはいえ、ドルは依然として国際貿易の主要通貨であり、米国の政策変動の影響を各国が避けることは難しいとの認識を示した。多くの国では自国通貨による直接決済の仕組みが十分に整っておらず、米国が関与しない取引でもドル建てが主流となっている。このため、為替変動が貿易コストや価格競争力に直結しやすいという。
為替相場は米国の雇用統計や経済成長率などの指標にも左右されるため、今後も変動が続く可能性があるとし、企業に対しては為替変動による利益の振れを抑える対応が重要だと強調した。先物予約などのヘッジ手段を活用し、為替リスクを管理するよう呼びかけた。
タイ荷主協議会(Thai National Shippers’ Council, TNSC)も、バーツ高の背景としてFRBの利下げ観測を挙げた。米国からアジアへの資金移動が進み、タイが比較的安定した投資先と見なされていることが、海外資金の流入を促しているという。
一方で、こうした資金流入がバーツ高を押し上げ、輸出企業に不利に働いていると指摘した。バーツ高が進むと、輸出企業はドル建てで得た収入をバーツに換算した際の受取額が減少する。1ドル=32.5〜33バーツ前後だった時期と比べ、現在の水準では輸出高が5〜7%減少する可能性があるとし、その影響は今後の貿易統計で明らかになるとの見方を示した。
今後3カ月ほどはバーツ高が続く可能性があるものの、米国経済の先行きや金融政策次第で相場は変動し得るとして、過度な警戒は不要との認識を示した。特に中小企業に対しては、商業銀行が提供する先物契約などを活用し、為替リスクへの対応を急ぐよう求めた。
また、タイ中央銀行(BOT)に対しては、周辺諸国の通貨動向も踏まえつつ、輸出への影響を和らげるため、バーツ相場が過度に偏らないよう適切な管理を行う必要があるとしている。



















