【タイ】タクシン・チナワット元首相が9月9日に収監され、話題は既に次女のペートーンターン前首相に移っている。タイ英字紙「ネーション」などによると、ペートーンターン前首相および家族が抱える問題・疑惑は5件あり、うち4件が警察中央捜査局(CIB)および国家汚職防止委員会(NACC)の捜査・調査対象となっている。タクシン元首相の妹、インラック元首相も海外逃亡から帰国できずにおり、政治家一族チナワット家への追及は止む気配はない。
5件の問題・疑惑は「フン・セン・カンボジア元首相との音声記録流出問題」「予算執行の疑義、歳出配分の不適正疑惑」「約束手形に絡む租税回避疑惑」「カオヤイのリゾート用地を巡る便宜疑惑」「アルパイン・ゴルフ場建設地を巡る係争」。
フン・セン元首相との電話会談による失言問題で、ペートーンターン前首相は8月29日に解任された。しかし解任だけで問題が解決したわけではなく、CIBおよびNACCが職権乱用や国家安全保障違反の疑いで捜査・調査を継続している。
予算執行の疑義は、ペートーンターン政権下で成立した2025年度当初予算や第1次補正予算を巡るもの。本来の手続きや基準を無視し、特定の団体・地域に有利な歳出が割り振られたのではないかという告発・調査案件で、NACCが調査を続けている。
約束手形に絡む租税回避疑惑は、2019年にチナワット家が所有する企業株44億バーツ相当を担保に相続税納付の約束手形が発行され、2億バーツ超の租税回避(税負担の先送り)が疑われる件。やはりCIBとNACCが共同で解明に当たっている。
カオヤイのリゾート用地を巡る権利争いは、カオヤイ国立公園周辺の旧寺院所有地が民間事業者に譲渡・転売された件で、ペートーンターン前首相が便宜を図った疑いが持たれている。土地の帰属を巡り、内務省土地局が登録抹消を命じる行政手続きを進める一方、NACCも不正な権利移転に関与した職員・事業者の責任を追及している。民事・行政訴訟も継続中。
アルパイン・ゴルフ場建設地を巡る係争は、2002年にバンコク近郊パトゥムターニー県の寺院所有地が最終的にチナワット家に売却された件で、現在はアルパイン・ゴルフクラブが営業している。ペートーンターン前首相も株を保有していたが、首相就任直後の2024年9月4日、母親(ポッジャマーン氏)に譲渡した。内務省土地局が登録抹消を命じ、行政・民事レベルで係争中。
タクシン元首相は収監前、「私に関わるあらゆる対立に終止符を打ち、前に進む時」とSNSに国民向けのメッセージを投稿したが、チナワット家としての問題は山積みと、タイのメディアは報じている。
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