タイ深南部の戒厳令、一部で解除の方向へ マレーシアとの経済関係強化

【タイ】プームタム・ウェーチャヤチャイ副首相兼国防相は4月26、27日、タイ深南部のパッターニー、ヤラー、ナラーティワートの3県を訪問、軍や警察などの治安当局、行政責任者、実業家などと協議し、深南部の今後の方向性を確認する。3県内の4郡で戒厳令を解除し、隣国マレーシアとの経済関係を強化していく計画だ。

 テロが頻発する深南部には、2000年代のタクシン政権以降、戒厳令と非常事態宣言が繰り返し発令され、国軍、警察、自警団といった大規模な治安維持部隊が投入されているが、テロは一向に収まっていない。タクシン・チナワット元首相が今年2月に同地を訪問。首相在任中にテロを激化させてしまったたことで謝罪の意を示したが、同元首相に対する嫌悪感は未だ強く、しばらく下火となっていたテロが再び激化した。

 戒厳令の解除は、今年2月の閣議ですでに承認されているが、対象となる具体的な郡名は明らかにされていない。今回のタイ政府の対応は、マレーシアの意向を汲んだとみる向きがもっぱらだ。アンワル・イブラヒム首相が昨年、タクシン元首相をアセアン担当の個人顧問に指名。同元首相の2月の深南部訪問はマレーシアの指示といわれ、4月18、19日のアンワル首相のタイ実務訪問でも、深南部について話し合われた。

 ペートーンターン首相も昨年のマレーシア訪問以降、深南部での治安回復や経済発展についての発言が増えている。18日のアンワル首相との会談後には、両国の国境を成すスンガイ・コーロック川に新たな橋を建設する計画を発表。アンワル首相も「マレーシア北部とタイ深南部の経済成長促進に向けた取り組みの進展を歓迎」と述べた。

 タイはマレーシアにとって第6位の貿易相手国。2024年の貿易総額は250億米ドル超で、2027年までに年間300億米ドル達成を目指しているという。

 深南部と呼ばれるパッターニー、ヤラー、ナラーティワートの3県と隣接するソンクラー県3郡では以前より、分離独立を大義名分とするテロが続いている。マレーシア国境という土地柄、マレー系のムスリムが住民のほとんどを占めるため、一連のテロも「イスラムテロ」と報道されるが、イスラム的な時間感覚でテロが行われるものの宗教的な争いはない。本質は単純な利権争いと見られる。

パッターニー市内のモスクを警戒するタイ陸軍兵士 写真:newsclip

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