【タイ】中国が2025年2月、タイのドリアンから発がん性物質が検出されたとして輸入を拒否していたことが分かり、3月18日の閣議でピチャイ・ナリッタパン商務相とナルモン・ピンヨーンシンワット農業・協同組合相の間で口論が起きたもようだ。ペートーンターン・チナワット首相が、「後ほど議論していただき、結果を報告してほしい」と、その場を収めたという。
タイの複数メディアは、中国向けドリアンから検出されたのは「Basic Yellow 2(BY2、塩基性黄2号)」で、世界保健機関(WHO)が指定する発がん性物質「グループ2B」に属すると報じている。ドリアンの外皮をきれいに見せるため、一部の農家がBY2を使用しているとされる。今回、農協省農業振興局長がBY2検査で賄賂を受け取ったと疑われ、閑職に異動となって捜査を受けている。
ピチャイ商務相は閣議で、「拒否されて(行き場を失った)ドリアンはなぜ迅速に廃棄されないのか」と質問、ナルモン農協相が「廃棄にも手順がある」と回答し、ヒートアップして口論に発展したという。
閣議では、2月分の問題について提起されたが、BY2はそれ以前にも検出されている。年明け1月の時点ですでに輸入拒否があり、中国当局が1月25日から厳格な検査を実施していると、タイ国内でも報じられていた。具体的な量は、64トン、100個以上、2億バーツ分と、メディアによってばらつきがある。
ピチャイ商務相は翌19日、「ナルモン農協相との間に問題はない。輸出について心配しただけ」とメディアの質問に答えた。ピチャイ商務相は最近、コメ価格の下落で頭を抱えて輸出市場の開拓に奔走しており、順調と安心していたドリアン輸出で新たな問題が浮上し、閣議で自制心を失ったもよう。
ドリアンについては、タイ商務省貿易政策戦略事務局(TPSO)が今月、輸出総額が37億6000万米ドル(85万9183トン)に達して生鮮果物全体の73%を占め、輸出先トップは中国で97%だったと、いいこと尽くめの発表を行ったばかりだった。一方、ベトナムからの中国へのドリアン輸出も急速に伸びており、タイの競合となっている。