【タイ】11月20日早朝に発生した、深南部ソンクラー県テーパー郡の建設現場にM79グレネードランチャーによる擲(てき)弾2発が打ち込まれた事件は、タイ深南部の分離独立を大義名分とするテロ組織の犯行と断定された。同県選出のチャイヨン・マニールンサクン上院議員がタイのメディアの取材に対して答えた。
同事件では作業員3人がけがをしている。攻撃を受けた土地を所有する会社が隣のチャナ郡での工業団地開発に関わっていたため、反対派による攻撃の可能性もあるとされていたが、現場でさらに2発の爆発物が仕掛けられていたのが見つかり、テロ組織の犯行と断定された。同地には複数のテロ組織が存在、その一組織であるBRNの犯行と見られる。爆発物には殺傷能力を高めるための金属片が仕込まれていたという。
タイ深南部と呼ばれるパタニー、ヤラー、ナラーティワートの3県と隣接するソンクラー県3郡では以前より、分離独立を大義名分とするテロが続いている。マレーシア国境という土地柄、ムスリムが住民のほとんどを占めるため、一連のテロも「イスラムテロ」と報道されるが、宗教的な争いはない。本質は単純な利権争いと見られる。
国際イスラムテロ組織とのつながりも指摘されているが、利権を維持するにはテロ範囲をタイ深南部にとどめておく必要があり、それほどの連携はないと見られている。海外のテロ組織にとっても、タイの一地方に関与するメリットは少ない。
国軍3軍、警察、政府機関の独自部隊、住民らによる自警団などを合わせた治安部隊は数万人規模に膨らんでいるが、事件が起きると警戒が厳重になり、減ると警戒もおざなりになるという繰り返しで、テロは一向に収まらない。