【タイ】スイス・ネスレのタイ現法「ネスレ(タイ)」が、バンコク民事裁判所(ミンブリー)から業務一時停止を命じられ、窮地に立たされている。4月3日の命令後、同社はタイ国内の小売業者に在庫状況を確認するなど慌てた素振りを見せており、タイの複数メディアが今週に入ってネスレの現状を報じ始めている。
これまでの報道によると、ネスレはタイ財閥のマハーギッシリ家との折半で1990年、「Quality Coffee Products Co., Ltd.(QCP)」を設立。同社を通してネスカフェ製品の製造販売を続けてきた。QCPはタイでネスカフェの代名詞となり、創設者のプラユット・マハーギッシリ氏も「ネスカフェのゴッドファーザー」と評された。
しかし、2021年にネスレが自社による業務展開を目指してQCPとの契約解消に動き出しことで、マハーギッシリ家との関係が悪化。国際仲裁裁定を持ち出すなど強引な手段に出たものの、今後の事業運営についてQCP株主から合意を得られないまま、契約は2024年末に満了を迎えた。
泥沼関係の中、ネスレが2025年3月14日にQCPの解散を求める訴えを起こし、QCP筆頭株主のチャルームチャイ・マハーギッシリ氏がこれを受けてネスレの役員や関連企業を訴え返し、今回の差し止めに至った。
ネスレによるネスカフェ商品の製造、販売、輸入など全ての業務が差し止めとなっているが、小売業者が抱える在庫は対象外で、タイ国内の小売店では現在のところ、ネスカフェ商品は通常どおり販売されている。ただ、在庫はもっても数カ月で、ネスレは小売業者によるベトナムやインドネシアからのネスカフェ商品の輸入で乗り切る考えのようだ。
生産能力の引き上げにはそれなりの設備投資が必要とされ、競合がすぐに乗り出してくることはないとの見方がもっぱら。ただ、差し止めが長引けばその分だけシェアを奪われかねず、ネスレは危機感を募らせているという。