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機械製造のローランドDG、製造データ基盤をタイ拠点に展開 日タイ間の情報共有を強化
- 2025/12/18
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【タイ】大判プリンターや歯科用切削工作機などを手がけ、世界200以上の国・地域で事業を展開する「ローランド ディー.ジー.」(本社・静岡県浜松市)は製造データの共有基盤として、製造業向けAIデータプラットフォーム「CADDi」を日本とタイの両拠点に導入し、設計・調達に関する情報連携の強化を進める。日本拠点ではすでにコスト削減などの効果が確認されており、タイ拠点でも本格的な活用を始めた。
同社では近年、海外メーカーの台頭による競争激化を背景に、新製品投入のスピードが収益確保の重要な要素となっている。従来2年以上かかっていた開発サイクルを約1年に短縮する必要に迫られる中、日本拠点では試作のリードタイムを確保するため、日本の特急試作メーカーとタイの量産メーカーに同時に発注する「二重発注」を行ってきた。この結果、開発日程は守られる一方、年間で数千万円規模のコストが発生していた。
コスト構造を分析したところ、設計図面の差し戻しが多発していることが分かり、その背景として日本とタイの拠点間で製造現場の情報が十分に共有されていない実態が浮かび上がった。不適合事例や加工の難易度といった現場情報が設計側に伝わらず、修正を繰り返す状況が続いていたという。
こうした課題への対応策として、日本拠点は製造データを一元的に管理・活用できるCADDiを導入。結果、図面の差し戻し件数が減少して特急試作にかかる費用の削減につながったほか、新製品立ち上げまでの期間も短縮された。試作回数も従来の3回から2回に減り、結果として年間数千万円規模のコスト削減効果が見込まれている。
日本での導入が一定の成果を上げる中、同社ではサブスクリプション更新の時期に合わせ、調達部門の担当者がタイ拠点に赴任することとなり、タイ側でも同様の課題解決を図るためCADDiの導入検討が始まった。タイ拠点では、日本からの二重発注を受ける立場にあったほか、ファイル管理が個人に依存しており、担当者の異動や退職によってノウハウが失われやすいという問題を抱えていた。
CADDiの活用によって、過去の図面や品質情報、調達に関する知見をデータとして蓄積・検索できるようになり、類似部品の把握やコスト削減余地の検討が進んだ。その結果、導入から数か月で58部品について見直しが行われ、年間500万バーツとしていたコスト削減目標を上回る効果が見込まれる状況となった。
同社では今後、調達業務に関する権限と責任を段階的にタイ拠点に移し、現地の情報を生かした意思決定を進める方針だとしている。日本拠点はより戦略的な業務に注力し、タイで確立したデータ活用の手法を、将来的にはインドなど他地域の拠点にも展開していく考えだ。



















