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- 【再録】戸島大佐の「在留邦人の危機管理」FILE No. 2:一歩下がって付き合う同胞 ②
【再録】戸島大佐の「在留邦人の危機管理」FILE No. 2:一歩下がって付き合う同胞 ②
- 2024/11/3
- コラム, 企業・業界, 戸島大佐の「在留邦人の危機管理」
―― 「何でもできる」と売り込む日系コンサルタント会社に注意 ――
個人でも法人でも、被害を受けた日本人が泣きつく先は、日本語が通じる弁護士事務所や日系コンサルタント会社だ。日本人であれば日本語で相談したいと思うのでは当然だ。しかしここで再び、同胞に騙されるという騒ぎが起きる。
タイにも日本人弁護士がいる。しかし彼らのほとんどは日本で資格を認定された弁護士であっても、タイの弁護士ではない。多くはコンサルタント会社で「顧問「や「相談役」として活躍し、在タイ日本人からのさまざまな相談を受けている。コンサルタント会社のみならず弁護士事務所、法律事務所、会計事務所、日系に限らず日本人が勤務する外資系もあるが、ここではコンサルタント会社に統一する。いずれにせよ、誠実な経営と確たる実績で知られている会社はたくさんある。
まず、「何でもできる」と売り込むコンサルタント会社は要注意だ。あらゆる分野を得意とする弁護士はいない。盗難、詐欺、交通事故など必ず得手不得手がある。それを誠実に顧客に伝えて仕事を受けなければ、勝てる裁判で負けることになる。日本でも同様だ。38年の警察勤務で幾度となく法廷に立ったが、あらゆる分野に精通した弁護士に出会った記憶はない。
タイで「自分は弁護士だから」と自慢して名乗る日本人が、実際にどれほど自ら法廷に立っているだろうか。そのような大風呂敷を広げる輩ほど、受けた仕事を社内のタイ人弁護士に丸投げするだけの役割しかない。そんなコンサルタント会社に対しては、どの分野を得意とするのかあらかじめ聞いておくことが必要で、何でもホイホイ頼んでしまうと後で必ず失敗する。
タイには弁護士を名乗って同胞への恐喝を繰り返す日本人がいる。法律事務所だと思って相談したら、恐喝事務所だったというわけだ。そのような輩に限って、「信頼できる会社を選びましょう」と同胞に呼びかけている。被害者が在タイ日本大使館領事部邦人援護班に相談し、警察にも被害届を出すなどすれば事件はすぐに解決するのに、それらの手続きを取らなかったばかりに泣き寝入りしてしまう日本人が多いようだ。
確信犯として悪事を働く会社もあれば、悪気がなくただ無能なだけの会社もある。「何でもできる」という積極的な営業も不可欠であろうが、コンサルタント会社に限っていうと、それは「無責任」でしかない。
コンサルタント会社というのは、会社設立代行といった業務も引き受けるが、ここでもまた問題が絶えない。日系進出企業を支援する日本政府の出先機関の責任者もまず、「コンサルタント会社に注意してください」と助言をしている。「日本語が通じるというだけで相手を信用して何でも依頼」して安心してしまうと、第一歩からつまずくことになる。
そしてやはり、被害に遭ったと気付いたら即「在タイ日本大使館領事部邦人援護班」への相談だ。海外生活は自己責任が前提。国としては相談がなければ援護に乗り出せないのだ。
戸島国雄
日本の元警視庁刑事部鑑識捜査官、元似顔絵捜査官、タイではタイ警察から警察大佐の階級を与えられる。これまでに4冊、日タイの事件・捜査に関する本を執筆、テレビ出演も多数。現在、日本に帰国中。
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