タイ国会、2回目の首相指名選挙無期延期 政局混迷

【タイ】ワンムハマッドノー・マター下院議長(国会議長、79)は27日に予定していた2回目の首相指名選挙を無期延期すると25日、表明した。

 今月13日に上下両院合同会議で行われた1回目の首相指名選挙で過半数獲得に失敗した下院(定数500)第1党ガウクライ党(ムーブフォワード党)のピター・リムジャルーンラット党首(42)が上下両院合同会議での採決で再度首相指名選挙に出ることが禁じられたことについて、違憲だとしてオンブズマンが憲法裁判所に訴えたため。

 憲法裁の判断を待ち、2回目の首相指名選挙を行う。

 また、28日はワチラロンコン国王生誕日で、王党派の議員から、27日の首相指名選挙がずれ込むと、28日の国王生誕日祝賀式典に出席できないという懸念が出ていた。

 5月14日に行われた下院総選挙では、旧野党陣営のガウクライ党が151議席(比例代表の得票率36.2%)を獲得して第1党に、同じく旧野党陣営でタクシン元首相派のプアタイ党が141議席(比例代表の得票率27.7%)で第2党になった。この2党に小政党6党を加えた民主派陣営は下院で過半数の312議席を確保し、首相指名選挙に臨んだが、国王批判に重罰を科す不敬罪の改正廃止、徴兵制の廃止などを掲げる革新系のガウクライ党に対し、プラユット軍事政権(2014~2019年)が議員を選任した非民選の議会上院(定数250)、下院の旧与党陣営といった王党派が強い拒否感を示し、上下両院合同会議での採決で、ピター党首の得票は324票にとどまり、首相選出に必要な376票にとどかなかった。

 1回目の首相指名選挙後、民主派陣営は次回の首相指名選挙でプアタイ党の首相候補を擁立することで合意した。これを受け、プアタイ党は下院の旧与党陣営と上院の切り崩しを図ったが、王党派陣営はガウクライ党が参加する連立政権を支持しないという態度を崩さず、プアタイ党による多数派工作は暗礁に乗り上げた。

 今後のシナリオとしては、(1)プアタイ党がガウクライ党を見捨てて旧与党陣営と組み連立政権を樹立(2)下院の旧与党陣営が上院の支持で少数与党となり政権を樹立(3)来年5月の上院の任期切れを待ち、民主派8党が政権を樹立(現行憲法の規定では、次期上院は首相指名選挙に投票できない)――が考えられる。

 (2)のケースでは、下院ですぐに内閣不信任案が可決され、退陣を迫られることになる。(3)は実質的な政府不在が長期間続くことになり、ビジネス界から反対の声が強い。(1)の可能性が最も高いとみられているが、プアタイ党にとっては負担の大きい選択となる。プアタイ党の幹部は下院選前、タクシン派政権を追放した2014年の軍事クーデターを支持した旧与党陣営とは組まないと再三明言した。前言を翻し、若年層に多大な人気を誇るガウクライ党を裏切れば、次回の選挙で苦戦は必至だ。ただ、プアタイ党の実質的なオーナーとされ、2008年から事実上の国外亡命生活を送るタクシン元首相(73)は最近、帰国の意思をSNSで度々明らかにした。タイで実刑判決を受けているため、帰国すれば収監が待っているが、プアタイ党が旧与党陣営と連立政権を組めば、王党派と手打ちし、恩赦、減刑などが可能とみられる。高齢となったタクシン氏が政治的野心を失い、帰国を実現することだけを考えているとしたら、プアタイ党を捨て駒にして帰国を選ぶ可能性もありそうだ。

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