タクシン元首相を不敬罪で起訴 「枢密院がクーデター」発言で

【タイ】タイの公共放送タイPBSなどによると、タイ最高検察庁は18日、タクシン元首相(74)を不敬罪で起訴した。不敬罪は国王夫妻と王位継承者への批判を禁じるもので、違反した場合、1件につき最長15年の禁錮刑が科される。

 タクシン氏は同日、罪状認否のためバンコクの刑事裁判所に出頭して、起訴内容を否認し、保釈保証金50万バーツで保釈された。出国は禁止された。

 最高検によると、タクシン氏は2015年にソウルで韓国メディアの取材を受けた際に、妹のインラク首相(当時)率いる政権が2014年の軍事クーデターで崩壊したことについて、国王の諮問機関である枢密院がクーデターを首謀したなどと主張した。最高検はこの発言が国王に対する中傷と判断した。

 タクシン氏は1949年、北部チェンマイ生まれの客家系華人。中国名は丘達新。警察に勤務するかたわら、官公庁へのコンピュータリース、不動産開発などを手がけ、1987年に警察中佐で退職し、携帯電話サービス、通信衛星などを展開するタイ通信最大手チン・グループを育て上げた。1998年に政党を設立。地方、貧困層へのばらまき政策を掲げ、2001年の下院総選挙で大勝し首相。2005年の総選挙も圧勝、首相に再選された。再選で強い権力を手にし、王室の権威に挑戦する姿勢をみせたとされ、王室を旗印に既得権益を握る王党派との対立が深まった。2006年9月の軍事クーデターで失脚し、2008年から事実上の国外亡命生活に入った。2023年5月の総選挙後、王党派とタクシン派が連立を組むことで合意し、タクシン派政党プアタイ党のセーター氏を首相とする連立政権が発足。タクシン氏はこれを受け、同年8月、15年ぶりに帰国した。

 帰国当日に、裁判所で権力乱用などで禁錮8年を宣告されたが、健康問題を理由に、刑務所ではなく警察病院に収容された。同月末、恩赦で刑期が1年に短縮され、今年2月に仮釈放された。王党派は軍のほか、裁判所、官僚機構に強い影響力を持つとされる。タクシン氏の帰国から仮釈放にいたる一連の流れは、連立政権発足の際の王党派とタクシン派の取引の一部とうわさされる。

 タクシン氏は仮釈放直後からセーター首相らと度々会談するなど実質的な政治活動を再開した。政権の最高実力者として君臨し、連立を組む王党派政党に分断工作を仕掛けたともされる。こうした動きが王党派を刺激し、今回の起訴につながったという見方もある。王党派はまた、憲法に違反する閣僚人事を行ったとして、セーター首相の解任を求める裁判を憲法裁判所で起こしている。

 

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