【タイ】政府は8月25日の閣議で、家庭内暴力の被害者保護を強化する新法案を承認した。2007年制定の現行法を全面的に見直し、変化する家庭内暴力の実態に対応する。
法案は社会開発人間安全保障省が提出し、法制委員会の審査を経て下院に送付される。「暴力」の範囲を拡大し、身体的な攻撃だけでなく、恐怖を与える言動、脅迫、経済的に追い詰める行為を含めた。「家族」の定義に元配偶者や同居者を加え、現代の家庭形態に合わせた保護を可能にする。
家庭内暴力は「示談不可」の犯罪と位置づけ、懲役1年以下または2万バーツ以下の罰金を規定。18歳未満への暴力や3年以内の再犯には加重処罰を適用する。さらに、警察や担当職員が即時に接近禁止や飲酒禁止などの暫定保護命令を出し、48時間以内に家庭裁判所が審査する仕組みを導入する。
事件後の対応も、従来の「調停・示談」から、当事者が共同で作成する「暴力防止・改善計画」に転換。6カ月以内に計画を履行すれば裁判所が終結を認め、違反すれば直ちに審理に移る。
背景には家庭内暴力の深刻化がある。2025年は年初から2000件超が報告され、2割が怒りの爆発、2割以上が薬物使用に関連していた。政府は、子どもや女性を中心に被害が広がる現状を踏まえ、家族全体の成熟と相互理解が不可欠だとしている。関係機関による全国的なデータベース構築や電子情報の連携、5年ごとの制度評価も義務付け、家庭を「安全な場所」とする長期的な仕組みづくりを目指す。



























