セーター氏がタイ首相就任 政治経験ゼロ、連立11党の大所帯率いる

【タイ】22日のタイ上下両院合同会議で第30代の首相に選出されたセーター・タウィーシン氏(61)が23日、ワチラロンコン国王(71)の承認を受け、正式に首相に就任した。閣僚を選任して政権が発足するのは9月後半になる見通し。

 セーター氏が所属するプアタイ党の本部で、下院事務局長が首相就任の勅令を読み上げた後、セーター氏が国王の肖像画の前で拝跪(き)礼した。セーター氏は就任後初のスピーチで、「これからの4年は変化の4年になる」「国民の声を聞き、たゆまず働き、よい未来を築く」などと述べた。式典には連立各党の幹部らが出席した。

 セーター政権は旧野党陣営でタクシン元首相派のプアタイ党(下院141議席)、旧与党陣営で地方の政治ビジネス閥などの集合体であるプームジャイタイ党(同71議席)、プラウィット・ウォンスワン副首相(元陸軍司令官、78)率いる親軍王党派パランプラチャーラット党(同40議席)、パランプラチャーラット党から分離したルワムタイサーンチャート党(同36議席)など11党、314議席。タクシン派と王党派は過去20年にわたり抗争を繰り広げたが、プアタイ党は事実上の党首で2008年から国外亡命生活を送るタクシン・チナワット元首相(74)の帰国実現、王党派は王室を旗印とする既得権益層に挑戦して急激に台頭した革新系ガウクライ党(ムーブフォワード党、下院151議席)による政権奪取の阻止を目的に、手を組んだ。こうした複雑な事情を抱える大所帯の政権を、元実業家で政治経験ゼロのセーター氏がまとめることになる。

■デジタルマネー1万バーツ支給

 プアタイ党の主な政策は、▼居住地の半径4キロ以内で使用できる1万バーツのデジタルマネー支給(16歳以上の全国民対象)▼2027年までに、最低賃金を1日600バーツ、大卒初任給を月2万5000バーツに引き上げ▼プラユット軍事政権(2014~2019年)が作成施行した、民主主義を制限する現行憲法の改正▼徴兵制の廃止――など。前政権でプームジャイタイ党が主導した大麻自由化は管理を強化して継続する見通しだ。国王批判に重罰を科す不敬罪の改正は見送る。

 〈セーター・タウィーシン〉 1962年、バンコク生まれ。父親はタイ陸軍士官、母親は華人系で金融、不動産、小売りなどの事業を手がけるジュートラクン(朱)財閥出身で、ジュートラクン家、大手商業銀行カシコン銀行創業家の華人金融財閥ラムサム(伍)家などと縁戚関係にある。米クレアモント大学院大学で経営学修士号(MBA)を取得。1986年から米消費財大手プロクター&ギャンブル(P&G)のタイ法人に勤務した。1988年、ジュートラクン家、ラムサム家などが出資する不動産デベロッパー、センシリに参加し、後に最高経営責任者(CEO)を務めた。センシリは1996年、タイ証券取引所(SET)に上場。2022年度業績は売上高349.7億バーツ、最終利益43億バーツ。セーター氏は2023年4月にセンシリのCEOを退任し、プアタイ党に参加した。私生活では医師の女性と結婚し、2男1女をもうけた。

セーター氏(写真提供、プアタイ党)

セーター氏(写真提供、プアタイ党)

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