第2次アヌティン政権、「10プラス政策」で経済再建と国家競争力強化へ

【タイ】アヌティン・チャーンウィーラクーン首相は4月9日、憲法第162条に基づく内閣政策表明(所信表明演説)を行った。「10プラス政策」とする新政権の基本方針と主要政策を打ち出した。

 国家運営の基本原則として、国・宗教・国王の尊重、国王を元首とする民主主義体制の堅持、法の支配と公正な法執行、透明性ある行政運営の3点を掲げた。これまで、不安定な国際環境の下で緊急性の高い政策を進めてきたが、政府の体制が整ったことを踏まえ、今後は限られた資源を最大限活用し、将来の危機にも対応できる柔軟性を高めるとした。

 タイは経済、社会、環境、安全保障の各分野で成長を阻む課題に直面しており、当面の問題解決と同時に経済・社会構造の改革を進める必要があると説明。行政運営は戦略分野ごとの「クラスター型統合運営」に改め、民間企業や国民と連携し、政府は支援と調整役に徹する。行政サービスの全面的なデジタル化を進め、迅速性、正確性、透明性を高める方針も示した。

 経済分野では、雇用と起業の機会を広く確保し、知識、資金、技術へのアクセスを支援することで、中小企業を含む事業者の成長を後押しする。デジタル経済の活用、重点産業への投資促進、科学技術とイノベーションの強化により、中所得国の罠からの脱却を目指す。金融・資本市場の近代化や民間資金の活用によるインフラ整備も進める。

 貿易では、国際競争力の強化と市場多角化を図り、官民一体の「Team Thailand」で輸出とサービス貿易を拡大する。農業は従来型から精密・持続可能型に転換し、データやAIを活用して生産から流通までの付加価値を高め、食料安全保障の中核拠点としての地位確立を目指す。観光は量から質へと転換し、通年型の観光地づくりや地域主導の持続可能な観光、国内観光の活性化、安全対策の強化を進める。

 外交・安全保障では、国際的な信頼と地位の向上、経済外交の推進、国境管理の強化を掲げ、近隣国との協力による越境問題への対応や、南部国境地域の安定化に取り組む。治安面では、違法賭博や薬物の取り締まりを徹底し、査証(ビザ)免除制度の見直しも検討する。国防体制の整備と志願兵制度の充実、徴兵制度改革も進める。

 社会分野では、無償教育の実効性を高め、オンライン学習環境の整備や教育・雇用制度の柔軟化により、修了後すぐに働ける人材育成を図る。医療保険制度の効率化と社会保障法制の見直しで、全国どこでも迅速に医療を受けられる体制を整える。少子高齢化に対応し、家族と地域社会の基盤強化、高齢者や弱者の居住支援を進める。

 災害・環境分野では、水管理と防災の体系化、国家災害保険制度の整備、2050年までの温室効果ガス実質ゼロ達成を目標に、再生可能エネルギーの普及、環境配慮型輸送への転換、国際基準のカーボンクレジット市場創設、自然資源の保全を進める。

 行政改革では、迅速な行政サービスの実現、財政規律の強化、時代に合わない法令の見直しや廃止、投資や公共調達を阻害する制度の改善、汚職の構造的解消に取り組む。政策実行力を高めるため、経済、産業・貿易、インフラ・環境、社会保障、外交・安全保障の五つの戦略クラスターを設ける。

 アヌティン首相は、「内から強い国を築き、国民が自立し、経済が競争力を持ち、世界から信頼されるタイを実現する」と述べ、掲げた政策を着実に実行する決意を示した。

 中東情勢の緊迫化など世界的な不確実性が高まる中、国家の結束を強め、財政規律を維持しつつ経済成長と国民生活の安定を図る姿勢を強調している。

アヌティン首相 写真:タイ首相府

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