【タイ】タイ政府観光庁(TAT)は、年末年始の観光収益が前年同期比で2~9%減少するとの見通しを示した。南部で発生した洪水やカンボジア国境での緊張が影響し、外国人入国者数の減少が見込まれる。一方、タイ人の海外旅行はバーツ高を背景として堅調に推移しているという。
ターパニー・キアットパイブーンTAT総裁によると、年末年始の観光収益は前年同期比2~9%減の700億~765億バーツ(3800億円相当)にとどまると予想される。主因は外国人市場で、特に深刻な洪水に見舞われた南部ソンクラー県ハジャイ郡および周辺地域へのマレーシア人入国者の減少が響いている。
タイとカンボジアの国境を巡る緊張も、年末の旅行需要に影を落としている。中国、香港、日本といった影響を受けやすい市場で旅行意欲が低下したもよう。同地域からの12月20日~2026年1月1日の外国人入国者数は、前年同期比6~12%減の140万~150万人と見込まれ、観光収益も同4~15%減の516億~580億バーツに落ち込むとみられる。
一方、中距離・長距離路線の予約は堅調で、同期間の座席予約数は前年を6%上回ったという。欧州各地からのバンコク、東部ウタパオ、北部チェンラーイ、南部プーケット、クラビーへのチャーター便など、年末年始に合わせた10路線以上の国際線が新たに開設された。
国内旅行については、12月31日から1月4日までの期間に496万人、観光収益185億バーツと、いずれも前年同期比7%増となる見通し。5連休という長期休暇、涼しめの気候、国内各地でのイベントが需要を押し上げている。TATが主催するカウントダウンイベントでは、85万9300件の国内旅行を通じて48億3000万バーツの経済効果が見込まれ、前年を8%上回ると期待される。
一方、タイ旅行代理店協会(ATTA)は、タイ人による海外旅行需要が拡大していると指摘している。中国のビザ免除措置、新規路線の増加、手頃な運賃を背景に、タイ人旅行者の最大の渡航先となっている。日本は円安が追い風となり2位につけているが、航空運賃は依然として高水準だという。
バーツ高は海外旅行を後押ししており、中間所得層は経済状況への懸念を抱えつつも、割安感を生かして年に1、2回は海外旅行を楽しむという傾向が続いている。海外旅行者数は上半期に前年同期比で20%ほど増加し、下半期にカンボジアとの国境問題で伸びが鈍化した。それでも今年の海外旅行は、2019年実績を上回った2024年からさらに10~15%成長する見通しだという。



















