〈タイ業界事情〉ワークフロー業務におけるAIの学習機能と進化について BANGKOK TOKI SYSTEM CO., LTD.

難波 孝次 氏 Managing Director

 今回も前回の続きとしまして業務管理システムに絡めたAI機能について考えてみたいと思います。前回はEコマースについてということで、どちらかと言えば外に向いたシステムであったのに対して、今回は表題にありますようにワークフロー業務ということで、内部の管理業務に焦点を当てまして、今回はその中でも購買依頼に対する承認フローについてを取り上げたいと思っております。

 それでそういった購買依頼に関連するワークフローシステムについてはかなりポピュラーなものではありまして、一般的なERPパッケージシステムに組み込まれていたりワークフローシステムとして独立した形で販売されているケースもあり、システム自体は既に完成されたものですので、そこに果たしてAI機能を組み込む余地があるのかという点についてを今回は考えてみます。

1、購買ワークフローの概要

 ということで、先ずは購買ワークフローとは何ぞやという点について話をさせていただきますと、簡単に言えばその名の通り社内で必要なものを購買する為の仕組みでありまして、大は制作機械から小はボールペンといった消耗品に至るまで、会社として日常的に購買をおこなうものには様々なものがあるのですが、いくら仕事で必要になるとは言っても担当者さんが欲しいものを自由気ままに購入するわけには当然ではありますがいきません。そこで購買品のスペックやら仕入先を決定する為の会社としてのルールが必要になりまして、その社内ルールをシステム化したものが購買ワークフローということになります。

 具体的には100万バーツ以上の機械を購入する場合と1本50バーツのボールペンを購入する場合ではそのプロセスも当たり前ですが異なって来まして、例えば100万バーツ以上の購買には購買品目の決定に至る様々な資料が必要になると共に同資料を元にして5段階の承認者さんのチェック作業を経て最終的に会社のトップが決断を下す形になるのに対して、1,000バーツ以下の購買には担当部署のマネージャーさん一人の承認で購買が可能になるといった仕組みとなります。

 このような金額による承認ルールの他にも購買品によっては毎回同じものを買っているので金額が大きくとも最低限の承認で購買できるといった品目単位での承認ルール等もあります。それで同ルールをシステム内に組み込むことにより、各部署のユーザーさんより何れの品物を何れの仕入先さんから何月何日までに購買したいといった依頼データが入力されますので、そのデータを元に該当レベルの承認者さんにメールやラインで承認待ちデータの存在を通知し、同メールに記載されているアドレスをクリックすることにより承認作業がおこなわれます。そして最終承認が終了した依頼データより注文データが自動作成されるといった流れが一般的な購買ワークフローシステムになりますでしょうか。

2、購買価格の分析にAIを利用

 それでは上記のような購買ワークフローにAI機能を組み込むことを考えてみますと、どうなりますでしょうか。先ずはAIの得意分野となります過去データの分析機能を駆使して現在出されている購買依頼が妥当なものであるかどうかを確認してみます。具体的な例を挙げますと、1ダース600バーツのボールペンの購買依頼があったとしまして、過去にボールペンを購入した実績を購買管理システムの中から引っ張り出してみた場合、直近数年間の実績に比べて価格が同じであれば問題ないのですが上がっていたとしますと、更なる分析が必要となります。そこで次に型番と仕入先が同じかどうかをチェックして同じであれば、価格がどれくらい違っているのかにも寄るのですが単に仕入先が価格をアップしたということで納得できるのですが、型番や仕入先が違っていた場合なぜ同じものを同じところから購入しないのかという疑問が湧いてきます。理由として今までの型番が廃盤になったとか仕入先自体が廃業してしまったとかあるいは今までより機能性や耐久性に優れた品物なのでといった様々なものが考えられるかと思いますが、そういった理由を購買依頼ユーザーに問い合わせるといったステップを加えることが可能となります。

3、購買タイミングの分析にAIを利用

 この項については前項とよく似た形で同じく過去の購買実績を分析するのですが、ここでは購買頻度についての調査をおこないます。今回も600バーツのボールペンについて考えてみますと(実際600バーツくらいでそこまで細かく分析しないでしょうがあくまでも一例ということで)、今までの購買タイミングが凡そ半年ごとのペースでおこなわれていた場合、今回の購買依頼が前回から3ヶ月しか経過していないとすれば、こちらも何らかの理由付けが必要となります。理由としましては部署内のメンバーが倍に増えたからとか仕事上で急に書き物が増えたとか、様々なものがあるかと思いますが、そういった今までの購買頻度とそれに対して今回の購買タイミングが妥当かどうかを理由を含めて承認時に提示することにより、最終判断を承認者さんがおこなう形になりますでしょうか。

4、購買品の影響分析にAIを利用

 この項は前項までに比べますと少々複雑で分かりにくい内容となりまして、要は現在依頼の出されている購買品が本当に会社のためになるのかどうかをAIに判断させる機能となります。実は前項まではわざわざAIに頼らずとも手動でロジックを組めば対応できそうな内容でしたので、ここからがいよいよAI利用の本領発揮ともいえる訳です。

 例を挙げますと流石にボールペンの購入が会社の将来を左右するという訳には行きませんので、ここでは社内製造を行う為の材料購入のケースを考えてみます。それで社内製造の主原料として1年前まではA社から材料Bを購入していて今年からはC社から材料Dを購入する形に変更していた場合、現在また材料Dに対する購買依頼が発生した際にこのまま継続して材料Dを購入し続けることで問題は無いのか若しくは材料Bに戻した方が良いのかをAIに判断させる仕組みを考えてみます。とは言いましてもそもそも材料を変更した背景には価格やら品質やら様々な要因を鑑みて決定しているはずですので、(単に材料Bが廃盤になったからという理由もあるかも知れませんが)その答え合わせをするための分析作業という位置付けになりますでしょうか。

 それで具体的にはどのように分析をおこなうのかと言いますと、先ずは今までの生産実績データを元にして材料Bを使用した場合と材料Dを使用した場合との比較をおこなう形となりまして、比較項目としましては、効率管理の面での作業時間、品質管理の面での歩留まり等様々な値を比較してどちらがより短時間で高品質の製品を制作出来たのかという内容をを見極めます。ただ生産作業に関しましては作業人員の違いや制作する製品の違い等もありますので単純比較は難しい部分もあるかとは思いますが、それでも年間のデータであれば様々な条件下での比較がおこなえるかと思います。

 あと考えられる分析内容としましては、生産関連ですと制作機械や金型の購入、間接経費関連ですとPCやソフトウェアの購入等についても、関連する生産実績や会計データを元にして同じような分析作業がおこなえるのではないでしょうか。

 ということで、今回は購買ワークフローシステムに関連するAI機能の活用方法について話をさせていただきましたが、次回も同じような形でより実用的なシステムに対するAI活用についての話をさせていただければと考えております。

BANGKOK TOKI SYSTEM CO., LTD.
住所:333 Lao Peng Nguan Tower 1, 17th Floor, Unit B1, SoiChaypuang,
Viphavadi-Rangsit Road, Chomphol, Chatuchak, Bangkok 10900
電話:0-2618-8310-1 ファクス:0-2618-8312 Eメール:toki@ksc.th.com
ウェブサイト:www.bkktoki.com

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