「タイで第3位のがん、45歳以上は検診必須」大腸がん予防と最新治療法セミナー@バムルンラード病院その1

Asst. Prof. Dr. Yudhtana Sattawatthamrong
ユッタナー・サタワッタムロン医師

Gastroenterology & Hepatology 消化器・肝臓内科
FASGE(Fellow of the American Society for Gastrointestinal Endoscopyn 米国消化器内視鏡学会フェロー)
バムルンラード病院消化器科オープンハウス「Colon Care Open House」大腸がん予防と最新治療法セミナー!~健康的な腸活を始めよう!~より

大腸がんについて説明するユッタナー医師

症状が出てしまったら手遅れ感も

 大腸がんはほかの病気と同様に、なるべく早い段階での発見が重要となる。治療を始める時点のステージによって生存率は変わり、およそ、

ステージ1=生存率90%
ステージ2=生存率80%
ステージ3=生存率70%
ステージ4=生存率20%

となる。大腸がんはまず、45歳以上で発見されることが多い。疑わしい症状がなくても早いうちから積極的に検診を受けることが必要で、逆に症状が出てしまっていると、それはステージが進行していることを意味し、すでに手遅れといった感もある。腫瘍(しゅよう)は大腸の内部の壁に発生してキノコのように成長し、ステージ3やステージ4では壁を破ってリンパ腺まで侵し、ほかの部位に転移していく。

 症状として真っ先に血便が挙げられる。鮮やかな血が塗られたような便は痔(ぢ)の可能性が高い。食べ物によって便の色は変わるものだが、大腸がんを理由とする血便は黒っぽい。次に、腫瘍によって大腸や直腸を通りづらくなっているので、排便は細かったり小さかったりする。また、便秘や下痢、特に便秘は気をつけたい。これら3つの症状が大腸がんによるものだったとした場合、ステージがかなり進行している心配がある。

年齢が高いほど、慢性的な便秘であるほど危険

 先に45歳以上での発症率が高いと述べたとおり、気を付けるべき点は「年齢」にある。性別的な発症の違いはない。慢性的な便秘の悩みを抱えている人は、便はいわば毒素でがん細胞に栄養を与えてしまっており、発症する危険が高い。1日1回の排便が必須。遺伝子的な要素もあり、大腸がんを発症してしまった身内、特に直系がいる人は注意が必要。また、以前に卵巣、子宮、胃などでがんが発症していたことがあると、リンク症として関連器官の大腸もがんにかかりやすくなる。多くの日本の方々が知っていると想像する、安倍晋三元首相が苦労されていた炎症性腸疾患(IBD)も、大腸がんを引き起こしやすい。

痛みのない大腸カメラ検査

 検診は専門医による問診から始まる。常用薬、特に抗血栓薬の常用などは問診時に注意深く確認される。次に下剤によって大腸内を清掃し、ポリープが発生している可能性のある壁を、肛門から挿入する大腸カメラ(大腸内視鏡)で検査していく。

 ポリープには腫瘍性と非腫瘍性がある。疑わしいポリープが発見された場合、2センチ以下はそれ自体を、それより大きい場合は周囲の細胞を含めて切除する。施術は睡眠剤の服用によって眠っている最中に行われるので痛みはない。もとより、施術の良し悪しは使用機器の性能と使い手の技術によって決まる。当院では日本のオリンパス製機器を導入、使い手の消化器系専門医は8割がFASGEの認定を受けている。感染症予防も徹底し、AIも有効的に導入して国際レベルの医療を提供している。

 便検査、レントゲン検査、バリウム検査などいくつかの方法はあるが、最も有効なのは大腸カメラ検査だ。ただ、遺伝子的な心配がある場合は遺伝子検査を受けるのも一案だ。また、腫瘍マーカー(CEA)はがん発見には優れた効果を発揮しない。100人中60人のがんを発見できるレベルだ。CEAはむしろ、がん治療後の経緯の確認に役立つといえる。

 大腸カメラ検査によって何も発見されなかった場合、次の検査は5~10年後でも構わない。しかし、疑わしきポリープを切除してそれが細胞検査士によって腫瘍性と判断されなくても、次の検査は1~2年後に受けておきたい。

便秘をなくすこと、赤肉や揚げ物を減らすこと

 タイでもがん死亡率として3番目に多いのが大腸がんで、食嗜好(しこう)の欧米化、ストレス(による便秘)、飲酒や喫煙などが増加の理由として挙げられる。

 繰り返しとなるが、日常生活で最も気を付けたいのは便秘だ。それを防ぐためにも、食事は野菜や果物を増やし、牛や豚などの赤肉、焼き肉、がん細胞の元となるといわれる焦げ目が付きやすい焼き物や揚げ物などを減らすことが大切だ。

同時通訳する川口研太氏(ビジネス開発部)

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