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〈タイ業界事情〉業務管理システムにおいて、より生成AIの特質を活かした機能組み込みは可能なのか BANGKOK TOKI SYSTEM CO., LTD.
- 2025/1/2
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難波 孝次 氏 Managing Director
業務管理システムにおいて、より生成AIの特質を活かした機能組み込みは可能なのか
今回も前回に引き続き業務管理システムに対して生成AI機能をどのように取り入れるのかについて考えてみたいと思います。前回は生成AI機能の中でも話題になっておりますChat GPTについての話をさせていただきましたが、今回はより生成AIの特質を活かした形での機能組み込みについてということで、どういう事かと言いますと、AIに全く新しい音楽を作らせたりとかイラストを描かせたりとか小説を作らせたりとか、そういったクリエイティブな作業を業務管理システムの中でやらせてみようという試みであります。
ただ、そうは言いましても前回も少し話をさせていただいたように業務管理システムの処理としましては財務諸表の作成であれ製造原価の算出であれ、基本的に結果に至るまでのロジックはあらかじめ定められているケースがほとんどで、そこにクリエイティブな要素を組み込む余地などは無さそうに思えます。
そこで先ずは生成AIの特質について考えてみますと、確かに新しい音楽を作ったり小説を作ることが出来ると言われると、何か今までにないとんでもない能力のように思えるのですが、実は基本的な部分はそれまでのAIとそれほど大きく変わってはいないという事実があります。どういうことかと言いますと、新しいものを創作する為には人間の頭脳でも同じなのですが今まで先達が作ってきた様々な作品を理解しつつ参考にしながらそれまでにないものを作って行くという作業になりますので、当然ながら生成AIに既存の作品を学習させるというプロセスが必要になります。ということはデータのボリュームや学習方法の複雑さといった違いはあるのですが、おこなう作業としては今までと同様与えられた情報を元に内容を解析することで、より正解に近い回答を返すといった処理自体は変わらないということになります。
ということで、上記の内容を業務管理システムに当てはめた場合、既存の作品が今までデータベース内に蓄積された入力データで、新たに創作された作品がこれから入力をおこなうデータということになりますでしょうか。つまり今までのデータを元にこれから発生するであろうデータを予測してやるということで、普通に考えればそんなことが出来るのか?と思われるかもしれませんが、実は一般的な業務管理システムでもAI機能は使わずとも似たような処理は既におこなわれております。具体的には会計管理における減価償却の伝票であるとか、販売管理における合計請求書の作成処理とかがそれにあたりまして、固定資産システムに各資産の取得額や償却年数等の必要パラメーターを登録することにより、自動的に毎月の減価償却に対する会計伝票が作成される機能や、日々のインボイスデータを元にして請求締日に合計請求書を発行する機能については、AIなんぞを使用しなくとも以前から普通に装備されているものであります。
ただ、そういった機能は減価償却の算出方法といったルールがあらかじめ明確に決められているからこそおこなえる特殊なケースでありまして、その他の一般的な経費伝票であるとかインボイスの発行処理を自動発行することは簡単にはいかないのですが、そこで次のステップとしましてAI機能を活用した場合にどこまで自動処理に近づけるかを例を挙げて考えてみたいと思います。
1、経費伝票の自動発行機能の可能性について
毎月発生する経費伝票としましては、前述の減価償却費以外にも電気代や水道代、オフィスの賃貸料や通信費用等様々なものが存在しますが、その中で自動発行がおこなえそうなものを考えてみますとオフィスの賃貸料や通信費用などが挙げられますでしょうか。これらの経費は年単位の契約で決められているケースが多いので、例えば先月と先々月が同じ金額であれば今月も同じ金額であると推測することは可能であると思われます。もちろん契約が更新されるタイミングでは金額が変わってしまうのですが、それ以外の月であれば減価償却費と同様経費伝票を自動作成することはそれほど難しいことではないでしょう。それに対して電気代や水道代といった毎月使用量に応じて変動する経緯伝票を自動作成することは可能でしょうか?普通に考えればあらかじめ電気や水道の使用量を予想してピタリと当てるなどといったことは不可能で、これらの経費伝票を自動発行することは無理だと言えるでしょう。ところが予測できないのは金額の部分のみで他の要素である相手方勘定科目や経費部門といった部分については今まで発行された伝票データを参照すれば、自動でセットすることはそれほど難しいことではなく、ということは経費科目ごとに金額を入力出来る画面が自動的に表示されれば、全自動とまではいかないまでも半自動での伝票発行は可能となります。具体的には経費伝票自動作成業務を立ち上げると、当日の日付を元にして毎月同じ頃に発行されている過去伝票を検索して、同内容を元に各種経費単位で経費の入力がおこなえるような画面(賃貸料等の毎月決まった額の経費の場合は自動的にその金額を表示)が表示され、同画面より金額入力後に各種経費伝票を自動発行する形になりますでしょうか。
2、インボイス自動発行機能の可能性について
このインボイス発行についても、実はAI機能に頼らずともかなりの部分で自動発行を可能にしているシステムは結構あるかと思います。どういうことかと言いますと、通常業務管理システムの流れとして、受注管理の目的で得意先さんからの注文データをシステムに入力されているケースは多く、そこでこの受注データを元にすれば、何れの得意先に何月何日にどういった品目を納品するであろうという情報は取得できますので、同情報を元にして得意先や日付範囲を指定することによりインボイスを自動発行するような機能は一般的な業務管理システムでも装備されております。それではそこに生成AI的な機能は必要ないのかと問われますと一概にそうとも言えず、よくあるケースとして商品入荷の遅れや緊急オーダーの為生産が間に合わないといった理由で、必ずしも注文データ通りに納品が行われないこともあります。その場合には当然インボイス発行は出来ませんので、ここでAI機能を活用することを考えてみますと、先ず自動発行できるかどうかについては商品ごとの在庫数量をリアルタイムで管理しているシステムであれば、インボイス発行時に該当品目の在庫が存在しているか否かで判断は可能となります。それでは次に在庫が全数ではなく一部だけ存在している場合はどうでしょうか。この場合出荷できる分のみを取り急ぎ納品する場合もありますし、全数揃ってからでないと納品出来ない場合もあるかと思いまして、そこの判断は過去に同一得意先同一品目で分納のケースがあったかどうかを検索して、分納実績があれば取り急ぎ出荷できる分のみでインボイスを作成する形になりますでしょうか。では残りの納品分に対するインボイス発行はどのように考えれば良いでしょうか。普通に考えれば在庫システムと連動して、受注数量を満たす量の在庫が入庫された時点で出荷指示データを作成すると共にインボイス発行をおこなう形が考えられます。またここの部分に予測処理を組み込むことにより、納品物が購買品であれば発注残管理、社内製作品であれば生産計画システムより該当品目の入庫スケジュールからデータを取得して何日後に納品が行えるかを判断して先日付にてインボイス作成をあらかじめおこなっておくことも可能となります。
3、製造原価予測機能の可能性について
前項までの内容はどちらかと言えば既存機能の延長という形で、現時点でもある程度の自動処理が行えているところに、AI機能を加えてさらに便利な使い方を模索するという、どちらかと言えば補助的な使用方法だったのですが、この項はかなり本格的な使用方法となります。具体的にどのようなことをやらせるのかと言いますと、要は生産管理システムにおいて品目ごとの製造原価を予測してやろうという内容となりまして、以前にも似たような機能について話をさせていただいたことがございますが、今回はより生成AIの特徴を活かす形での機能について考えてみたいと思います。ということで、先ずはAIに過去データを学習させることから始めまして、基本のデータとしましては原価計算システム内にある過去数年間の品目ごとの実際製造原価をその詳細要素単位で取り込みをおこない、後は生産計画の元になる受注データや材料費算出の元となる購買データなどを関連付けて同じように取り込みます。そしてそれらのデータの関連性を探し出し、例えば来期の製造原価を算出するとなりますと過去数年間の品目別実績原価を元にして製造品目の実生産数と受注内示と確定受注との関連係数を導き出して現在届いている来年以降の受注内示データを元に生産予想数を算出します。次に品目ごとの生産予想数を元にして、1ユニット単位での製造原価を算出するのですが、この処理はかなり複雑多岐に渡りまして、例えば原価の大半を占める原材料費であればシステムに登録されたBOMマスターを参照して必要材料の使用量を求めた後に同値に対して購買単価を掛けることにより算出はおこなえるのですが、ただ現時点での購買単価がいつまでも更新されないとは限らず、また輸入品の場合は為替レートの変動についても考慮する必要があり、あとは以前に購入した材料がかなり残っているケース等も考えられる為、この材料費一つとってみましても予測をおこなうのは一筋縄ではいかないと言えるでしょう。それでは各生産工程ごとの費用算出についてはどうでしょうか。生産機械等の減価償却費や従業員の給与等であれば将来的に新たな機械を購入したり給与更新もあるとは言え、かなり近い値を予測することは可能かと思います。ただその他の経費については直接原価にしろ間接原価にしろ変動要素がかなり大きく、これらを正確に算出するとなりますとAIの力を借りてすら中々に難しい問題ではあります。
ということで今回も生成AIの活用ということで、実はその名称に呼応するようなもう少し派手な機能を説明できればと考えていたのですが、かなり長くなってしまいましたので、今回はここまでとさせていただき、この続きとなります製造原価の予測機能の仕様詳細については、次回に回させていただければと考えております。
BANGKOK TOKI SYSTEM CO., LTD.
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