タイ最高裁、民主派政治家の被選挙権を生涯剥奪

【タイ】タイの公共放送タイPBSなどによると、タイ王室に関する不適切なコメントと写真をフェイスブックに投稿し、憲法で敬意の対象と定められた国王を中傷したとして、タイ汚職取締委員会が民主派の政治家パンニカー・ワニット氏を政治家の倫理規定違反で訴えた裁判で、タイ最高裁判所は20日、訴えを認め、生涯にわたり、パンニカー氏の被選挙権を剥奪し、政治職に就くことを禁じた。

 パンニカー氏は議会下院(定数500)第1党で野党のガウクライ党(ムーブフォワード党)の前身である新未来党の元スポークスパーソン。新未来党はプラユット軍事政権(2014~2019年)下の2018年に設立された。王室改革、国王批判を禁じた不敬罪の改正、クーデターを繰り返すタイ軍の抜本改革、軍政が作成施行した民主主義を制限する内容の現行憲法の改正などを訴えて、2019年3月に8年ぶりに実施された議会下院(定数500)総選挙で81議席を獲得し、第3党に躍り出た。2019年10月には、2連隊の指揮権と予算をタイ陸軍からワチラロンコン国王に移管する緊急勅令の国会採決で唯一反対票を投じた。同年11月、党首のタナートン氏が下院選に立候補した際にメディア会社の株式を保有していたことが選挙法違反だとして、憲法裁判所が同氏の下院議員資格をはく奪。翌2020年2月、新未来党が下院選の際にタナートン氏から1億9120万バーツを借り入れたことが1個人からの多額の政治献金を禁じた政党法違反にあたるとして、憲法裁が同党を解党し、タナートン氏、パンニカー氏ら党幹部16人の参政権を10年間停止した。

 新未来党の支持勢力が新たに立ち上げたガウクライ党は今年5月の下院選で151議席(比例代表の得票率36.2%)を獲得して第1党になったが、7月に行われた上下両院合同会議での首相指名選挙では、首相候補として擁立した党首のピター氏に対し、下院の旧与党陣営とプラユット軍政が議員を選任した非民選の議会上院(定数250)が反対票を投じ、首相指名を逃した。ガウクライ党はその後、野党に追いやられた。

 ピター氏は首相指名選挙後、すでに事業を停止した有料テレビ会社の株式を父親から相続していたことで、憲法裁により、下院議員資格の停止処分を受けた。最終的に、タナートン氏同様、下院議員を失職して参政権停止処分を受ける可能性がある。ガウクライ党自体も、不敬罪改正が憲法違反に当たるとした王党派弁護士の訴えを憲法裁が受理し、解党処分を受ける恐れが強まっている。

 タイでは王室を旗印とする王党派・既得権益層と、民主化を求める若者、都市中間層、地方住民の対立が激しくなっている。王党派は選挙で劣勢に立たされているが、軍、裁判所、官僚機構に強い影響力を持つとされる。

ガウクライ党のピター党首(写真提供、Move Forward Party)

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