タイ下院第1党が第2党の首相候補に反対 「民意に反する」

【タイ】5月14日の議会下院(定数500)選で151議席(比例代表の得票率36.2%)を獲得して第1党になった旧野党陣営で革新系のガウクライ党(ムーブフォワード党)は15日に党所属の下院議員による会議を開き、月内に上下両院合同会議で行われる見通しの2回目の首相指名選挙で、同じく旧野党陣営で旧与党陣営と組み連立政権樹立を目指すタクシン元首相派のプアタイ党(下院141議席、比例代表の得票率27.7%)の首相候補に投票しないことを満場一致で決めた。

 旧与党陣営との連立政権は下院選で示された民意に反するとしている。

 ガウクライ党は下院選後、プアタイ党など民主派7党と連立を組んで、下院で過半数の312議席を確保し、7月13日、上下両院合同会議の首相指名選挙に、ガウクライ党のピター・リムジャルーンラット党首(42)を擁立して臨んだ。しかし、国王批判に重罰を科す不敬罪の改正、徴兵制の廃止などを掲げるガウクライ党に対し、プラユット軍事政権(2014~2019年)が議員を選任した非民選の上院、下院の旧与党陣営といった王党派が反対票を投じ、ピター党首の得票は324票と、首相選出に必要な376票にとどかなかった。

 プアタイ党はこれを受け、ガウクライ党とたもとを分かち、旧与党陣営を含む連立政権の樹立を目指している。今月10日までに、旧与党陣営のプームジャイタイ党(下院71議席)、チャートタイパタナー党(同10議席)など8党と合意し、下院で238議席を確保した。プラウィット副首相(元陸軍司令官、78)率いるパランプラチャーラット党(下院40議席)、プラユット首相兼国防相(元陸軍司令官、69)率いるルワムタイサーンチャート党(下院36議席)という旧与党陣営の中核2党とも交渉中だ。上院議員の大半はプラウィット副首相の影響下にあるとされ、両党が参加すれば、連立政権発足が確実となる。

 ただ、プアタイ党は下院選前、タクシン派政権を追放した2014年の軍事クーデターの支持勢力であるパランプラチャーラット党、ルワムタイサーンチャート党とは連立を組まないと明言しており、両党を含む連立政権への参加は明白な公約違反となる。民意を無視して党利党略に走れば、次回の下院選で厳しい審判が下る可能性がある。

 プアタイ党が党の将来を危険にさらしてまで旧与党陣営との政権樹立を目指す背景には、同党の実質的な党首とされ、2008年以来国外亡命生活を送っているタクシン・チナワット元首相(74)が帰国の意志を示していることがありそうだ。タクシン氏は2008年以降に汚職などで有罪判決を受け、刑期は計10年となっている。タクシン氏は、プアタイ党に、司法、軍を影響下に置く王党派と連立政権を組ませ、恩赦で自身の刑期をできるだけ短縮し、帰国の実現を目指しているもようだ。

プアタイ党のチョンラナン党首(右から3人目)とチャートタイパタナー党のワラウット党首(左から3人目)(写真提供、プアタイ党)

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