【タイ】第二次世界大戦期の歴史遺構である「クウェー川鉄橋と泰緬鉄道(戦場にかける橋、Death Railway)」の国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界遺産登録への申請が、管轄権の問題や政治的な事情から進展していないもようだ。西部カーンジャナブリー県行政機構(PAO)が登録推進を図る一方、鉄道用地を管理するタイ国鉄(SRT)との権限調整や、文化省での審査が停滞したままだという。
同県は、両遺構を戦争の歴史を伝える観光資源として世界水準の観光地に育てたい考えで、世界遺産登録を後押ししている。歴史的背景を十分に理解しないまま写真撮影だけを目的に訪れる旅行者・観光客が多いため、旧日本軍が捕虜を使役して鉄道を建設した経緯を伝える博物館の整備が必要だとしている。ただ、泰緬鉄道は国鉄の西線として現役で利用されており、クウェー川鉄橋および周辺一帯は国鉄の管理下にあるため、県行政が直接の整備や再開発に踏み出せない状況となっている。
戦争の歴史を体系的に紹介している施設は現在、オーストラリアが設置した「ヘルファイア・パス解説センター」がほぼ唯一で、情報提供は十分とは言えない状況。毎年行われる慰霊行事も寺の縁日のような雰囲気になっており、世界的な観光地としての魅力を高める場にはなっていない。また、鉄道用地の一部は商業目的で貸し出されており、店舗が雑然と並ぶなど景観面の課題も残る。
一方、タイ国鉄は西線の最終駅ナームトック・サイヨーク・ノーイ駅から、戦後に撤去された線路を敷き直す延伸計画を進めている。ヘルファイア・パス解説センター付近までの歴史的ルートを復元する構想で、世界遺産登録に向けた推進機関が設立されれば、カーンジャナブリー県は全面的に協力するとしている。
クウェー川鉄橋と泰緬鉄道の世界遺産登録を巡っては、文化省が過去に申請に向けた検討を進めたものの、当時の政権にとって「戦略的な地域ではない」ことなどから進展がなく、現在でも停滞したままだという。天然資源環境省は申請に賛同しているとされ、「歴史的価値が高く、文化遺産として世界遺産登録の可能性がある」と評価している。当時の軌道の一部は国立公園を通過しており、タイにはまだない「複合遺産」として提案できる余地もあるという。























