【タイ】農業協同組合省は、欧州連合(EU)が導入した森林破壊防止規制(EUDR)に対応するため、農産物の生産地を追跡可能にする国家レベルの情報管理システム「EUDR Thailand Traceability Platform」を本格稼働させた。同省傘下の農業研究開発機構(ARDA)が開発したもので、EU市場向けの輸出農産物に対し、森林破壊と無関係であることを証明する仕組みを整備する。タイからEUへの農産物輸出は年間200億バーツ(1000億円相当)超に上り、EUの定める「低リスク国」の地位を維持するうえでも重要な施策となる。
EUDRは、農産物のEU域内輸入に際し、森林破壊との関係がないことや、生産地の位置情報、土地の権利証明、原産国の法令遵守などを求める新たな規制で、2024年から段階的に適用が始まっている。国連食糧農業機関(FAO)および国連環境計画(UNEP)の報告によれば、世界では年間1000万ヘクタール超の森林が失われており、EUはこうした環境破壊に加担しない貿易体制の構築を進めている。
タイは低リスク国に分類されているものの、規制への対応は中小企業や零細農家にとって依然として大きな課題となっている。特に、ゴム、パーム油、牛肉、木材、コーヒー、カカオ、大豆の7品目は、EU向け輸出額が年間約18億5000万米ドルに達し、制度対応の遅れが商機の損失につながる可能性もあるという。
タイで新たに稼働したプラットフォームは、衛星画像と生産地の位置情報を連携させ、土地権利の検証や、EUDRが求める「デュー・ディリジェンス報告書(DDS)」の作成を一元的に支援する。ARDAはこの仕組みの構築に向け、9件の研究プロジェクトを支援し、全国1000人超の農家に対して知識の普及を進めてきた。同プラットフォームは2026年1月21日から正式運用を開始。初回のEU輸出時にDDSを一度提出すれば、流通段階の事業者はその参照番号を引き継ぐだけで済むという。生産者レベルの小規模事業者には、簡易な一括申告制度も用意されている。
発表会では、EUDRの概要や関連法令15件のデータベース、プラットフォームの技術的仕組みなどを紹介する展示も行われた。農業協同組合省は、制度対応を通じてタイの農業輸出の持続可能性と環境責任を両立させる方針を改めて強調した。























