【タイ】タクシン・チナワット元首相が9月5日、健康診断を目的にシンガポールに渡航する予定だったが、タイ出国後に行き先を変更し、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイに向かった。元首相SNSで「タイ入管の手続き遅延が原因」と説明したが、メディアは「再び国外逃亡か」と報じ、憶測が広がっている。
タクシン元首相は8月22日、タイ刑事裁判所に訴えられていた不敬罪の容疑で無罪を言い渡され、タイ最高検察庁による控訴の可能性も報じられていたが、海外渡航禁止は解除されていた。シンガポールへの渡航は4日夜の予定で、目的は「個人的な約束」とされており、翌5日午後には戻ってくると報じられていた。
しかし、タクシン元首相のプライベートジェット機は離陸後、シンガポール手前で迂回し、ドバイに向かい始めた。航跡はフライトレーダーなどに捕らえられている。元首相は午前2時7分(タイ時間)、SNSの「X」に投稿し、「かつて治療を受けた医師の診察を受けるため、シンガポールを訪れる予定だった」と説明。しかし、「タイ入管手続きの2時間の遅延で、出国が妨げられた」と不満を述べ、「プライベートジェット機専用のシンガポール・セレター空港は午後10時に閉鎖され、間に合わなかった」とした。ドバイに変更した理由については、現地にこれまでの骨や肺の治療を長年にわたって担当してくれた医師がいるほか、2年以上会っていない友人らにも再会したいと説明している。
これまでの報道によると、プライベートジェット機が離陸したのはタイ時間で午後11時頃。タイ入管の手続きが2時間遅れたとしても、当初予定の午後9時(シンガポール時間10時)の離陸では間に合わなかったことになる。
タクシン元首相は2006年9月以降、一時的な帰国を挟んで海外逃亡生活を続け、2023年8月に帰国。拘留初日の夜に警察総合病院に移送され、2024年2月に仮釈放されるまで14階のVIPルームで過ごし、通常の懲役刑を免れた。これが「仮病」だったという理由で、最高裁判所に起訴され、来週9日にも判決が出る予定になっている。
メディアはタクシン元首相のドバイ行きをこぞって報じ、「裁判逃れで再び逃亡か?」と書き立てているが、国民からは「放っておけ」「金持ちはどうぞご自由に」などといった無関心の声も挙がっている。
●タイ刑事裁判所、タクシン元首相に無罪判決 王室巡る不敬罪容疑で
●タクシン元首相の仮病問題 「政権維持に悪影響」を考える国民が6割