【タイ】タイホテル協会(THA)は、ホテル従業員の最低賃金を一律400バーツに引き上げた政府方針に異議を唱え、行政裁判所への提訴を準備していることを明らかにした。8月20日に開催される協会会合で正式に決定される見通し。
新たな最低賃金に関しては、最低賃金三者委員会が6月17日、「全国のサービス業、2つ星もしくは客室50室以上のホテル、ホテル内の飲食店、カラオケやカクテルラウンジなどサービス施設法に基づく施設のそれぞれの従業員」およそ70万人を対象に、一律400バーツに引き上げると決定。7月1日から施行されている。
これに対し、ティエンプラシット・チャイヤパットラヌンTHA会長は、「地域差を考慮せず一律に適用したことで、収益の少ない地方のホテル経営に深刻な影響を与えている」と指摘。告示の撤回を求めていく方針を示した。全国8支部がすでに異議申し立てを行っており、協会委員会も提訴方針を了承しているという。
タイ政府は2025年を「観光年」と位置づけて各種キャンペーンを展開しているが、外国人観光客数はコロナ禍以前の水準に回復していない。年初には周辺諸国のタイ国境沿いで国際犯罪組織の存在が明らかになり、3月には地震、7月にはタイ・カンボジア国境で軍事衝突が発生するなど、観光立国としての評価を損なう事案が相次いだ。
THAは、「こうした問題への対応が後手に回る一方で、国民受けの良い最低賃金だけは積極的に引き上げている」として、政府への批判を強めている。