【タイ】タイ中央銀行(BOT)は12月17日の金融政策委員会(MPC)会合で、政策金利(翌日物レポ金利)を0.25ポイント引き下げ、年1.25%とすることを全会一致で決めた。利下げは2024年10月以降で5回目となり、累計の引き下げ幅は1.25ポイントに達した。
BOTは、2025年後半以降に景気の減速が明確になっているとし、実質経済成長率の見通しを2025年2.2%、2026年1.5%、2027年2.3%とした。個人消費は所得の伸び悩みを背景に勢いを欠き、輸出も米国の関税措置の影響が徐々に表れるとみている。一方、観光分野は回復基調を維持するとしながらも、近隣諸国からの旅行者の減少やタイ南部で発生した洪水が、年末から来年初めにかけて経済活動の重荷になる可能性を指摘した。
物価動向については、エネルギー価格や生鮮食品価格の下落、政府による生活費支援策の影響で低水準が続くとし、総合インフレ率を2025年マイナス0.1%、2026年0.3%、2027年1.0%と予測した。需要面からの物価押し上げ圧力は限定的で、デフレに陥るリスクは低いとしつつも、引き続き注意深く監視する姿勢を示した。コアインフレ率は2025年と2026年が0.8%、2027年が1.0%と見込んでいる。
金融面では、銀行の融資残高が縮小傾向にある中、信用力の低い借り手、特に中小企業や低所得層への貸し出しに慎重な姿勢が続くとの見方を示した。また、バーツ相場が域内で相対的に強含んでいることが、輸出採算や企業の資金繰りを圧迫しているとの認識も示した。為替については、相場に大きな影響を与える取引への対応を含め、監視を強める方針だという。
今後の下振れ要因としては、米国による追加関税措置、2027年度予算編成の遅れ、企業部門の調整の遅れなどが挙げられる。BOTは必要に応じて政策を機動的に見直すとしつつ、低成長の背景には構造的な要因も大きいとして、金融政策だけでなく、生産性の向上や市場の多角化といった幅広い対応が不可欠だと強調した。



















