【タイ】エークニティ・ニティタンプラパート副首相兼財務相は、国民の債務問題への対応策についてテレビ番組で説明し、タイ中央銀行(BOT)のウィタイ・ラッタナーコーン新総裁と協議を進めていることを明らかにした。1カ月以内に具体的な進展がある見通しだとしている。
エークニティ副首相によると、不良債権(NPL)の処理に向けて新たに資産管理会社(AMC)を設立する案と、既存の国営AMCであるスクムビット資産管理(SAM)およびバンコク・コマーシャル・アセット・マネジメント(BAM)を活用する案の2つが検討されている。新設には時間がかかるため、既存の仕組みを使う方が迅速に対応できるとみられる。財務省、BOT、タイ銀行協会の間で協議が続いている。
財源については、前政権が実施したプロジェクトで拠出された資金の一部を活用する。基金には約260億バーツが残っており、そのうち最大100億バーツを充てて銀行から不良債権を買い取る計画だ。買い取り価格は公正な水準とし、1997年のアジア通貨危機時と同様に低価格で取得した後、債務者の再建支援を行う。
債務者の多くは複数の銀行に借入を抱えており、延滞すれば各行から督促を受ける状況にある。AMCに債権を集約することで、返済能力に応じた再編が可能になると説明した。例えば、月収1万バーツの債務者が毎月5000バーツを返済していた場合、元本カットや金利引き下げにより返済額を1000バーツ程度に抑えることも可能。
一方、モラルハザードを防ぐため、返済猶予や債務削減を受けた債務者には金融規律を守らせる仕組みを導入する。期日通りの返済を続ければ追加の金利優遇を受けられるほか、信用スコアを改善し、将来的に再び金融サービスを利用できるようにする。
債権の買い取り価格については「公正な価格で行う」とし、今回は銀行と政府が損失や利益を分担する「ゲイン・ロス・シェアリング方式」を採用する方針を示した。エークニティ副首相は「重要なのは債務者を救済することだ」と強調した。