マイナスが続くタイ進出日系企業の業況感 バンコク日本人商工会議所調査

【タイ】バンコク日本人商工会議所(JCC)が今年5月7日から6月4日にかけて実施した「2024年上期日系企業景気動向調査」の回答結果がまとめられ、6月25日に発表された。前期比で業況が「上向いた」から「悪化した」を引いた業況感DIは、23年下期実績「マイナス17」、24年上期見通し「マイナス11」、同下期見通し「プラス9」だった。回答企業数は、会員企業1,644社の33.9%にあたる557社。

 2023年5月の調査では、22年下期実績「プラス24」、23年上期見通し「マイナス3」、23年下期見通し「プラス26」という回答結果になっていた。業況感が2023年から悪化した経緯が見て取れる。

 2024年上期の業況感は、インバウンドの回復による好影響が一部で見られたものの、国内の耐久財消費の不振や輸出需要の低調などで、23年からのマイナス続きとなった。24年下期は、インバウンドの回復の継続、タイ政府による景気対策の効果への期待などから、プラス9まで上向く見込みだが、1トンピックアップトラックをはじめとする新車販売台数の減少など、タイ進出日系企業の多くが携わる自動車関連産業が伸び悩むといった不安要素もある。

 設備投資は2024年度、「投資増」を見込む企業は23%、「横ばい」が同45%、「投資減」が同18%。

 2024年度下期の輸出動向は、「増加」を見込む企業は33%、「横ばい」が同48%、「減少」が同20%。今後の有望市場は「ベトナム」が48%でトップ。次いで「インド」43%、「インドネシア」31%、「日本」16%の順。

 業務計画におけるバーツ/ドルの設定為替レートは、「35.5以上36.0未満」のレンジに入る回答が全体の26.7%を占めて最多。次いで同「35.0以上35.5未満」20.5%。中央値は「35.12」。前年同時期の調査では、同「35.0以上35.5未満」が34.2%で最多、同「35.5以上36.0未満」は15.7%だった。

 業務計画における円/バーツの設定為替レートは、「4.0以上4.1未満」のレンジに入る回答が全体の30.8%を占めて最多。次いで同「4.1以上4.2未満」21.6%となった。中央値は「4.0」。前年同時期の調査でも、同「4.0以上4.1未満」が33.4%で最多、同「4.1以上4.2未満」が16.9%だった。

 経営上の問題点として挙げられたのは、複数回答の合計で「他社との競争激化」が65%で最多となった。次いで「総人件費の上昇」43%、「原材料価格の上昇」42%、「為替変動の対応」29%。製造業では「エネルギーコストの上昇」との回答が29%に上った。

 タイ政府への要望としては、複数回答の合計で「景気対策の促進(消費喚起)」が31%を占めて最多、次いで「大気汚染対策の実施」21%、「交通インフラの整備」20%となっている。業種別では、製造業では「金融対策の安定化(為替・金利)」21%や「洪水対策の実施」21%など、非製造業では「外国人事業法の緩和」19%なども多かった。

 会員企業が最近改善したと考える「投資環境の改善(政策への評価)」は、複数回答の合計で「交通インフラ整備」が28%を占めて最多。以下、「労働許可証(ワークパミット)、査証(ビザ)の発給に関する問題」19%、「行政手続きの電子化」12%と続いた。

 業況感DIのプラス要素の一つとみなされるインバウンドの回復に関連し、タイ政府が最近打ち出した観光産業を中心とした経済活性化とインフラ整備の構想「イグナイト・タイランド」について、「知らない」と回答した会員企業が81%に上った。同構想で期待する分野は、複数回答の合計で「物流分野」が41%で最多。ほか、「未来モビリティ分野」33%、「観光分野」23%、「ウェルネス・医療分野」20%などが挙げられた。

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