〈タイ業界事情〉EコマースサイトにおけるAIの学習機能と進化について BANGKOK TOKI SYSTEM CO., LTD.

難波 孝次 氏 Managing Director

 前回は戦略情報システムに絡めてAIの学習機能と進化についてのお話をさせていただきましたが、今回はその続きとしましてEコマースにおけるAI機能について考えてみたいと思います。Eコマースと言いますのはその名の通り電子データにより商取引をおこなうもので、代表的なサイトがアマゾンや楽天市場、タイではLazadaやShopee等になりますでしょうか。要はインターネットのブラウザーを介して商品の注文及び支払いまで済ましてしまえる機能の総称であります。弊社でもお客様からのご依頼でEコマースサイトを作成させていただくこともありまして、それで実際に開発をおこなっていくうちに、同機能はかなりAI機能と相性が良いということを実感させられまして、以前にもEコマースにはAI機能がかなりの範囲で組み込まれているというお話をさせていただいたことはあるのですが、今回は一般的に使用されているそういった機能にプラスして今後どのように発展させていけるのかという部分まで考えてみたいと思います。

1、現在のAI活用方法

 ということで、先ずは今現在実際にEコマースサイトにて活用されているAI機能について説明させていただきますと、最もポピュラーな使用方法はユーザーさん毎で今までの注文履歴を元におすすめ商品を目立つポジションに表示させることでしょうか。よくあるケースとしましては対象品が消耗品である場合、同品目をあるユーザーさんが凡そ半年ごとに注文されていたとしますと前回注文後5カ月近く経過した時点でその商品をお奨めとして表示させると効果的であるかと思います。また同じような手法として書籍や動画販売の場合同じシリーズを毎回購入されているユーザーさんがいらっしゃいましたら、同シリーズの新作が出た時点で同品目をお奨め商品として目立つポジションに表示させたり、それから注文履歴を元にして同じ商品を注文した別のユーザーさんが合わせて注文している商品をお奨めとして表示したりといった手法は現在一般的に使用されております。

2、プロモーションイベントの自動設定

 前項の内容がどちらかと言えば受動的なアクションであるのに対して、今度は能動的なアクションについて考えてみたいと思います。具体的には表題にありますプロモーションイベントを自動発生させてやろうというもので、通常プロモーションをおこなう目的としては先ず新製品の宣伝が挙げられますでしょうか。そこで新製品の発表時には標準価格よりもいくらか値段を下げたお買い得価格にて販売するようなロジックを組み込んで置き、サイトのおすすめ商品として目立つポジションに表示する形としておきます。ただこの値引き価格を決定するロジックについては少し頭を絞る必要があり、新しい商品の魅力を知らしめる為ですからマーケティング的に考えますと大幅な値引きをおこなえばその分派手なプロモートが行えるのですが、かと言っていつまでも原価割れの状態で販売を続けても本末転倒ですので、例えばプロモーション予算を決めておいて通常の販売価格で発生する粗利とプロモーション価格で販売した場合の粗利との差が予算額を上回った時点でイベントを終了させる形とします。その場合極端な値引きをしますとあっという間にプロモーションが終了して、結果新商品が認知されないままで終わってしまう恐れがありまして、では反対にほとんど値引きが行われない状態にしてしまいますと、プロモーションそのものが認知されないという訳の分からない状況となってしまいます。そこでその価格と売れ行きとのバランスを見ながら値引き金額をAIに決定させるという処理が必要となります。

3、他社商品との比較検討

 この項については更にアクティブな動きとなりまして、AI機能を自社サイトのみで完結させるのではなく外に打って出るということで、考え方としましては前回の戦略情報システムに近いのではないかと思います。要は最初に挙げさせていただいたような他のEコマースサイト等を参考にして自社商品と同等の機能を持った他社さんの商品を検索し互いの商品価格を比較する機能となります。ただ商品価格の比較と言いましても、内容量が違ったり別機能が付いていたりと単純比較をおこなうことは難しく、また比較内容を元に現状の販売実績等も考慮しながら自社商品の価格はどの程度が適正なのかをはじき出すのはかなりの難題になるかと思います。そこでここの部分は初期の段階では提示されたデータを元に人が判断する形となりまして、それでその判断結果を溜め込んでいくことにより最終的にはAIのみで適正価格を算出する形を目指します。

4、需要に対する商品改善提案

 この項はEコマースならではの販売分析処理となります。具体的にはEコマースサイトから得られる様々な情報を元にして、今後どのような動きをすれば良いのかという提案をおこなう機能となりまして、もちろん通常の販売管理システムからでもある程度の情報は得られるのですが、それは実際に販売が確定してからの情報でしかなく、ここで分析をおこなう内容としましては逆に販売に至らなかった情報が必要になる訳です。それでEコマースサイトであればそういった情報の取得が可能ということで、例えばある商品に対する検索履歴がものすごく多いのに関わらず注文実績がほとんどないというケースがあれば、その商品自体に対する潜在需要はかなり存在しているのに何らかの要因で注文まで至らないという判断がおこなえます。そこで原因を調査するフェーズに移る訳ですが、先ずは一番ダイレクトな要因となりそうな価格面について考えてみますと、検索されたユーザーさんの他の注文が該当品目より比較的低価格なものが中心になっていれば、価格付けが注文に対するネックとなっている可能性が考えられます。そこで内容量を減らす若しくは機能面を割愛した低価格品を用意するという提案が出て来るかと思います。また価格面ではそういった傾向が見られなかった場合、次にパッケージデザインや商品自体の形状、期限日、重量それから使用方法等もろもろの条件に対して、売れている商品との差異を見つけ出し改善点を提案するといった機能となります。

5、新規需要に対する新商品の提案

 今までは現状に対する分析及び改善手法だったのですが、この項は将来を見据えたものとなります。分析手法としましては前項と少し似ているのですがサイト上の検索欄にて現在どのようなワードにより検索が行われているかに注目することにより、トレンドとなっている事象を推測して新商品のアイデアを提案するといった内容です。こちらも例を挙げて考えてみますと、検索がおこなわれたワードとして例えば「防犯カメラ」や「リモート監視」といった家屋のセキュリティ関連に関するものが多くなってきたとした場合、そういった機器を現在自社で取り扱っていないのであれば、今後その方面の需要が伸びていく可能性があると判断して関連機器の取り扱いを提案するといった形で、これは一例ではありますが、この機能については他にも様々な発展性が考えられるかと思います。

 ということで、今回はEコマースに話を絞りましてAI機能の活用方法について話をさせていただきましたが、次回も同じような形でより実用的なシステムに対するAI活用についての話をさせていただければと考えております。

BANGKOK TOKI SYSTEM CO., LTD.
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