中国製高速鉄道、タイで開業見通せず インドネシアは赤字

【タイ、インドネシア】中国製高速鉄道事業がタイとインドネシアで困難に直面している。

 タイではタイ政府と中国政府による共同事業として、バンコクとタイ東北部の中心都市ナコンラチャシマを結ぶ路線(総延長251キロ)の建設が決まり、2017年に着工した。中国の技術で建設、運営し、約1800億バーツ(約7500億円)の建設費は全額タイ側が負担する。当初は2021年開業の予定だったが、建設が大きく遅れ、タイ政府は2022年に、開業見通しを2027年に変更した。

 ただし、2027年の開業も実現は不透明だ。タイ字紙マティチョンなどによると、土木工事の進捗率は2023年8月時点で24%、着工から6年以上経った今年2月時点で31%にとどまる。さらに、バンコク郊外の一部区間は設計が確定しておらず、ナコンラチャシマ近郊では地上を予定していた線路が住民の反対で高架に変更される見通しで、タイ政府当局者からは「開業は早くて2028年」という声が出ている。高速鉄道建設の現状について、タイのネットユーザーからは「6年で30%!あと13年か」、「早くしてくれないと寿命が尽きる」といった皮肉のコメントが寄せられている。

 タイと中国の両国政府はバンコク~ナコンラチャシマ高速鉄道を将来的にナコンラチャシマからラオス国境のタイ東北部ノンカイまで約360キロ延伸し、ノンカイのメコン川の対岸にあるラオスの首都ビエンチャンで中国ラオス鉄道(中国国境のラオスのボーテン~ビエンチャン間414キロ)と接続する構想を打ち出している。巨額の投資に見合う収入、経済効果を高速鉄道から得るには中国との路線接続が必須とみているためだ。ただ、バンコク~ナコンラチャシマ間ですら実際に開業できるかどうか見通せない状況で、構想の実現は危ぶまれている。

 インドネシアではジャカルタと西ジャワ州のバンドンを結ぶ東南アジア初の高速鉄道事業を中国と日本が競り合い、2015年にインドネシア政府が中国案を採用した。インドネシアと中国の国営企業による合弁会社が開発運営することになり、2016年に着工。建設現場に中国人労働者を送り込むなどして工事を進め、当初の予定から4年遅れの2023年10月に開業にこぎ着けた。全長142キロ、最高時速350キロで、開業から4カ月で累計乗客数は150万人を超えた。建設コストは当初予定を3割上回る73億ドルに上り、計画になかったインドネシア政府による財政支出、中国側の追加融資などを余儀なくされた。

 路線が短い上に、ジャカルタとバンドンの駅が市中心部から離れているという問題を抱える。運営会社は損益分岐点に達するのは早くて40年後としていたが、ニュースサイト、テンポによると、現在の1日の乗客数は想定の半分程度だ。運営会社に出資参画するインドネシア国鉄クレタ・アピ・インドネシアは高速鉄道の利用者を増やすため、1月末からジャカルタ〜バンドン間の在来線の本数を大幅に減らしたが、在来線の利用者の一部は高速鉄道ではなく運賃が安い路線バスに流れたという。

 インドネシア政府はジャカルタ〜バンドン高速鉄道の主な問題を路線が短いことと認識し、バンドンから約640キロ離れた東ジャワ州のスラバヤまで延伸する計画を中国政府と検討中だ。テンポはこの計画について、インドネシアの鉄道サービスと経済の墓場になりかねないと懸念を示している。

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