【タイ】タイ・ジャーナリスト協会は30日、タイの有料テレビ最大手トゥルービジョンズが14日投票のタイ下院(定数500)総選挙に関するBBC(英国放送協会)、NHK、CNNなど外国メディアの報道の一部を放送しなかったとして、憲法で保証された知る権利に影響を与えたとして懸念を表明し、トゥルービジョンズに対し、経緯を調査して公表すべきと提案した。
トゥルービジョンズはタイ最大級の財閥で華人系のCPグループ傘下。BBCの報道に関しては、下院選で第1党となった革新系野党ガウクライ(ムーブフォワード党)のピター党首のインタビューで、王室批判に重罰を科す不敬罪の改正に関する部分を放送しなかった。
不敬罪はタイ国王夫妻と王位継承者への批判を禁じるもので、違反した場合、1件につき最長15年の禁錮刑が科される。2014年の軍事クーデター以降、政権を掌握した王党派政権が不敬罪で民主派を訴追するケースが急増。タイの人権派弁護士団体によると、今年3月時点で、少なくとも237人が不敬罪で訴追されているという。
ガウクライ党は選挙戦で、不敬罪の改正・廃止、徴兵制の廃止などを掲げ、151議席(比例代表の得票率36.2%)を獲得して第1党となった。同党に対しては、14年のクーデターを率いたプラユット首相兼国防相(元陸軍司令官)ら王党派が強い拒否感を示している。プラユット首相は31日、記者団に不敬罪について質問されると、「すべての兵士、警官、公務員と多くの国民の心のなかにあり、改正に反対だ」と述べた。