【タイ・シンガポール】アヌティン・チャーンウィーラクーン首相は11月7日、シンガポールを公式訪問した。ローレンス・ウォン首相と会談し、両国の外交関係樹立60周年を記念して、今後の協力関係について意見を交わした。
アヌティン首相は、初の公式訪問に対する温かい歓迎と、リー・シェンロン上級相による故シリキット王太后への追悼に、感謝を述べた。ウォン首相も王太后の逝去に哀悼の意を表し、アヌティン氏の首相就任を祝意するとともに、アセアン首脳会議やAPECでの再会を踏まえ今回の訪問を歓迎した。
両首脳は、グリーン経済、デジタル分野、エネルギー安全保障を重点分野に掲げ、持続的な戦略的パートナーシップを推進することで一致した。グリーン経済では、2050年までのカーボンニュートラル達成を共通目標とし、アセアンで初となるカーボンクレジット取引に関する覚書の署名や、ラオス、タイ、マレーシア、シンガポールを結ぶ電力網計画での協力を確認した。
食料安全保障については、タイがシンガポール向けの安定的なコメ供給国となる意向を示し、コメ貿易協定を締結。さらに食品保存・加工技術への共同投資の可能性も探った。先端産業分野では、半導体、電気自動車、データセンターへの投資拡大を議論し、アヌティン首相はシンガポール企業に対しタイでの投資機会を呼びかけた。
デジタル経済では、PromptPay(タイ)とPayNow(シンガポール)の国際送金システムが成功例として挙げられ、サイバーセキュリティやデジタル人材育成、東部チョンブリー県の「タイ・デジタルバレー」構想での協力も確認された。両国はさらに、都市部高齢者ケアに関する保健分野の覚書にも署名し、医療体制や予防医療での連携を進める方針を示した。
安全保障面では、軍事訓練や国境犯罪対策での協力を継続し、特にオンライン詐欺対策を国際会議で議論することを確認。アヌティン首相は、情報ネットワークの拡充や共同訓練の実施を呼びかけた。
両首脳はまた、ASEANの中心的役割を支持し、交通・エネルギー・デジタル分野での地域連結性強化を議論。タイとカンボジア間の共同声明についても触れ、信頼回復と関係強化の基盤とすることで一致した。アヌティン首相は、重火器撤去、地雷除去、オンライン詐欺対策、国境問題への対応を重点課題として挙げ、平和的解決に向けたシンガポールの支援に謝意を示した。




















