【タイ】タイ政府は先の閣議で、陸軍に対する国境警備強化を目的とした予算8億6400万バーツ(40億円相当)の支出を承認した。カンボジアとの国境紛争の激化を受けての措置。
中央予算から支出される。アヌティン・チャーンウィーラクーン首相は、「予算は新たな安全保障上の事態に即応するため、陸軍の態勢強化を目的とする」と述べた。
予算を活用しての国境フェンス設置の是非を問う報道陣の質問に対して首相は、「安全保障上の理由から言及を控える」とした。タイ治安当局が国境線に沿って鉄条網や古タイヤを設置していることに対してカンボジア側の住民が不満をあらわにし、木の棒などで叩いて破壊行為に及んでいることが問題化。タイ側では、本格的なフェンスの設置が必要という声が上がっている。
アヌティン首相はまた、カンボジア政府が国際司法裁判所(ICJ)に申し立てを行った件について、「カンボジアに提訴の権利はあるが、我々は明確な立場を有しており、国家利益を断固として守る」と述べた。カンボジアはICJに、タイ側東北部スリン県パノム・ドンラック郡の国境線沿いのクメール遺跡、プラサート・タームアン・トムおよびプラサート・タークワーイの帰属の判断を求めている。
プラサート・タームアン・トムはタイの実効支配地内に建つが、プラサート・タークワーイは今回の軍事衝突でタイ陸軍が数十メートル後退したため、遺跡自体はカンボジア側に押さえられているもよう。
●カンボジア人が国境の鉄条網を破壊、タイ治安当局がゴム弾と催涙ガスで鎮圧
●タイ陸軍、国境紛争による遺跡の被害を調査 カンボジア軍の攻撃受け
カンボジア側プレアビヒアに近い、東北部シーサケート県カンタララック郡プーマクア
写真:タイ陸軍第2軍管区フェイスブックより