【タイ】タイ下院で9月5日に実施された首相指名投票で、プームジャイタイ党の党首、アヌティン・チャーンウィーラクーン前副首相兼内相が午後3時53分、有効投票数の過半数である247票を獲得し、首相就任が決定した。新首相の最終的な得票数は311票。対抗候補だったプアタイ党のチャイカセーム・ニティシリ元検事総長は152票。残りは棄権など。
首相候補者は憲法第88条に基づき、各政党が事前に提出した「首相候補者名簿」に記載されている必要がある。候補者を指名する政党は、下院議席の5%(25議席)以上を有していなければならず、10%(50人)以上の賛同が必要。有効投票数(今回494票)の過半数獲得で首相が決まる。
プームジャイタイ党は前回の下院選で最多の議席数を獲得したにもかかわらず野党に追いやられたプラチャーチョン党、プアタイ党の政敵だった野党パラン・プラチャーラット党と連立を組む。ペートーンターン・チナワット前首相が憲法裁判所の判決で解任される前日の8月28日には既に、アヌティン党首とパラン・プラチャーラット党のプラウィット・ウォンスワン党首(元副首相兼国防相・元陸軍司令官)は会談を行っていた。
与党第1党だったプアタイ党は、当初より連立を組める期待が低かった。実質的な支配者のタクシン元首相は今回、下院解散を画策したり、それが失敗すると党唯一かつ高齢(77)の首相候補、チャイカセーム氏を選出して「内閣発足直後の解散」を打ち出してみたりと、選挙で体制を立て直す戦略を押し通そうとした。「政治権力を国民に戻す」とこじつけて理解を得ようとしたが、ワン・ムハマッド・ノー・マター下院議長兼国会議長が率いるイスラム系プラチャーチャート党からの支持しか得られなかったもよう。肝心のタクシン元首相は5日当日、ドバイに向けて出国し、問題を放り出した格好となった。
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