【タイ】2024年8月18日、37歳というタイ史上最年少で就任したペートーンターン・チナワット首相が、2025年8月29日に在任わずか1年で失職した。父タクシン元首相の影響力を背景に政界入りしたが、政権運営において目立った成果を残すことはできなかった。
観光振興を掲げた政策は、周辺国との国境沿いに存在する国際犯罪拠点の実態が明らかになったことや、3月28日に発生した地震、さらにはタイ・カンボジア国境情勢の悪化などが重なって低調のまま。今年の「観光年」キャンペーンは閑古鳥が鳴く状況だ。カンボジアとの問題では、フン・セン元首相との電話会談内容がリークされ、連立与党の離脱により政権基盤が大きく揺らいだ。
ペートーンターン氏は1986年8月21日、バンコク生まれ。3人兄妹の末子で、次女にあたる。2004年にはチュラーロンコーン大学マスコミ学部の入試において、当時首相だった父親の指示による、試験問題漏えいや合格基準捻じ曲げといった疑惑が浮上し、国民の間に不信感が広がった。
ちなみにこの漏えい疑惑では、タクシン氏が「いつも私を慰めてくれている娘が、部屋をのぞいたら泣いていた」「首相の娘というだけでいじめないでほしい」と涙目で懇願し、報道陣に3度も拝む姿を見せた。タクシン氏はその直前、タイ深南部のテロ事件を巡って行方不明となった弁護士に関し、軍や警察の拉致関与が取りざたされる中、「家庭の問題じゃないのか」「もう死んじゃっていると思う」と平然と言い放ったばかりで、メディアからは「娘のときにはべそをかく」と非難を浴び、娘の評判をさらに下げる結果となった。
チュラ大卒業後は英国に渡り、サリー大学国際ホスピタリティ管理学部に入学して卒業。帰国後は親族の会社の役員や財団の理事などを務めた。2019年に香港で挙式を挙げた際、ワチラーロンコーン現国王(ラマ10世)の姉のウボンラット王女が仲人を務めた。現在、2児の母。
3人兄妹の中で最も政治に関心を持っていたとされ、父親の指導を受けていたもよう。首相就任以前にはカンボジアのフン・マネット首相を訪問し、そのときの写真も公開された。
2023年にプアタイ党の党首に就任。その年の総選挙で首相候補に指名され、セーター首相の失職を受けて首相に就任。しかし、父親の影響力の色が濃く、実質的な成果を挙げることなく政権を終えた。