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【再録】戸島大佐の「在留邦人の危機管理」FILE No. 8:通報先、相談先を考える
- 2025/3/3
- コラム, 戸島大佐の「在留邦人の危機管理」
―― 日本の警察組織には見られない外国人対応「観光警察」 ――
同連載でこれまで、在タイ日本人の間で発生するさまざまな問題を取り上げてきた。その中で、「被害に遭ったと気付いたら、まずは『在タイ日本大使館領事部邦人援護班』に相談」と述べているが、このような説明を「大使館が警察のような働きをする」と誤解する日本人がいる。
「街中でタイ人に絡まれたので邦人援護班に電話したのに対応してくれなかった」という苦情のコメントがあったようだが、大使館には当然、警察権はない。110番ではないのだから当たり前。タイにいるのだから当然、事件や事故に巻き込まれた際の通報は地元警察となる。
被害内容によって通報先を判断しなければならない。事件、事故、犯罪、盗難に巻き込まれた際の通報は全て地元警察。死亡、負傷、行方不明などで日本との連絡を必要とする案件は、邦人援護班への相談となる。日本人同士の問題も相談先は同班だが、実際の被害を証明してもらうためには、地元警察に赴かなければならない。
「地元警察は取り合ってくれない」という心配は確かにある。多忙の中、全ての案件に対応できないのは何もタイ警察だけではない。邦人援護班に相談すべき揉め事を地元警察に持ち込んだりしたらそれこそ、「日本人同士で解決しろ」となる。
そのようなときは、観光警察(ツーリストポリス)への通報が効率的だ。タイ語や英語が苦手でも、最初に一言、「Japanese」と告げれば、日本語可能な担当官につないでくれる。観光警察ではなく所轄が処理すべき案件のときは、その要領を説明してくれたり連絡を代行してくれたりする。
観光警察は、「外国人を守るための組織の編成」という日本の警察にはない発想の元に誕生。その取り組みは各国から評価を受けている。スワンナプーム空港ターミナル内に本部が置かれ、各国の言葉を話す警官が常に待機している。日本の成田空港や羽田空港にも警察が常駐、外国人利用客にも対応しているが、タイの観光警察のような組織に至っていないのが実情だ。
海外生活はそもそも自己責任。地元警察や邦人援護班の世話にならずに快適な生活を営めるか否かは、自己管理と危機管理次第だ。
戸島国雄
日本の元警視庁刑事部鑑識捜査官、元似顔絵捜査官、タイではタイ警察から警察大佐の階級を与えられる。これまでに4冊、日タイの事件・捜査に関する本を執筆、テレビ出演も多数。現在、日本に帰国中。
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