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タイ進出日系企業 – 見えないままの管理業務④「システムソフトウエアの維持管理の意味とは?」
- 2025/2/3
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海外専用業務ソフトウエア開発販売 SimLex Development Co., Ltd.
古賀 敏生 氏
システムソフトウエアを導入する4つの前提
規模の大小にかかわらず企業がERP、経理ソフト、各種システムといったシステムソフトウエアを導入する理由は当然、より正確な管理の実現にある。それはもちろん、誰にとっても一目瞭然でなければ管理とはいえない。しかし、タイ進出日系企業から導入のご相談をいただく際、日本独自の商習慣からくる特殊なご要望が挙がってくることが少なくない。
システムソフトウエア導入には4つの前提がある。
1)一個人ではなく不特定多数が使用するためのシステム
2)頻繁なバージョンアップなどソフトウエアを取り巻く環境への柔軟な対応
3)メンテや拡張のための標準部分とカスタマイズ部分の分離
4)作り手と使い手の一致した管理体制の確立
世界で通用しない日本独特の商習慣
世界一般の商取引において請求は取引単位であり、どこの企業も出荷時に請求書を発行する。後に変更が生じた場合は、「デビットノート」や「クレジットノート」などで修正をかけていく。
一方、日本の場合は検収基準で請求することが多く、クレジットノートが不要だ。請求書は月末の〆管理になる。日本人にとっては便利だろうが、他国では通用しない。ほかにも、タイでも他国でも先入れ先出しが原則だが、日本には月次平均法という概念がある。
このような、日本独特の商習慣を源とするカスタマイズのご要望があり、「認められていない」とご説明差し上げるわけだが、「本社向けに書式を分けて出したい」とされるお客様もいる。それもまた、認められていない行為である。過去には、「取引先に親切な勘定項目」の追加という、担当者のみぞ知るといったご要望もあった。
バージョンアップに対応しない製品が氾濫
システムは、頻繁にバージョンアップされていくOS、DB(データベース)、開発言語を駆使して開発される。どれも2年に1回は更新される。デスクトップやラップトップのOSやソフトが定期的にアップデートされるのと同じだ。ソフトウエアを取り巻く環境は常に進化しており、システムはそのような継続的な発展に対応していくことを前提として開発される。
にもかかわらず、柔軟に対応できないシステムが世の中には氾濫している。ニーズに応えてさえすれば顧客からのウケがいいから、OS、DB、開発言語のバージョンアップに対応できない代物を平然と開発する。
実のところ、これは将来の儲けにつながる。「バージョンアップに対応します」といって、それ相応の費用を請求して作り直せるからだ。やたらとバージョンアップに対応しない市販ソフトが出回っている理由もここにある。後継製品を買い直させるのが目的なのだ。
システムの標準部分で対応するバージョンアップ
OS、DB、開発言語だけでなく、システム自体もバージョンアップしていかなければならない。そうでなければ顧客は、いつまで経っても古臭いシステムを使い続けることになる。メンテも必要だし、バグ潰しもあり得る。
それが可能なシステムとはつまり、標準部分(本体部分)とカスタマイズ部分の分離だ。明確に分けておかなければ、カスタマイズ部分が標準部分をどんどん侵食して本来の製品と全く別物に化していく。すると当然、真っ当なバージョンアップがかけられなくなる。
もちろんこれも、一部の業者にとっては儲けるための有効な手段だ。ほとんど作り直しになっても、顧客には「バージョンアップです」と説明しておけばいい。
システムを通した末永いお付き合い
システムを使いこなすには、作り手と使い手の相互理解が必要だ。個人商店が一個人にものを売っているわけではない。会社として一致した管理体制を築いていくことになる。
PCがバージョンアップに対応しなくなって古びてきたら買い換えれば良いが、巨額な投資を伴うことが珍しくないシステム導入は、そうはいかない。「一度捕まえたら離れられなくなる」と本音を漏らした日系業者の噂がバンコクで広まったことがある。それは極端な例だとしても、「長期間使い続ける」という前提を無視したシステムが氾濫していることは否めない。
儲けのためだけのシステムを開発する業者を見極めるのは難しくない。将来的なバージョンアップにかかる費用を尋ねるだけでいい。初期開発費用の半額前後の額を答えたら、それはバージョンアップなどではなくほとんど作り直しを意味する。
弊社では保守契約をいただいているお客様に対しては、無償でバージョンアップを行っている。数カ月に1回の頻度で、オンラインで自動的にかける。システムの在るべき姿を考えるなら、当然の保守体制だ。
SimLex Developmet Co., Ltd. 古賀 敏生
九州大学を卒業後、大手ベアリング会社に就職し生産技術研究所にて工程設計を経験し、38才で独立後スケジューラ・生産管理システムを中心とした開発・販売を実施した。その後、タイにてSimLex Development Co., Ltd.を設立し、0ベースよりERP・生産管理システム・会計システムを開発・販売し現在に至る。
住所:382 Nice 2 Building, 5th Floor,Room 5/10 Ratchadaphisek Rd, Samsennok,
Huai Khwang, Bangkok 10320
電話:0-2694-3254, 087-829-6515(日本語)
ウェブサイト:https://simlex-grp.com/
Eメール:simlex_sales@globe-works.net