タイ政府によるアルコール規制緩和の検討、専門家が「近道に見えて行き止まり」

【タイ】タイの一部メディアが伝えるところによると、アルコール研究センター(CAS)は、タイ政府が検討している、アルコール販売に関するゾーニング(地域制限)の撤廃とナイトライフ施設の営業時間を午前4時まで延長するといった規制緩和案について、国内の公衆衛生体制に深刻な負担を及ぼしかねないと警告した。

 アヌティン・チャーンウィーラクーン首相は先に、内務省と保健省に対して来年1月までに同案を検討するよう指示した。税収や観光収益の引き上げを狙うとしているが、もともとはナイトクラブ業界や経済団体からの要望を受けたもの。

 CASのポンテープ・ウィチットクンナーコーン所長によれば、2023年に施行されたゾーニングに関する省令に基づき、首都バンコク、東部チョンブリー、北部チェンマイ、南部プーケット島およびサムイ島の5地域で営業時間が延長された結果、公衆衛生や安全に悪影響が出たという。調査結果では、対象地域ではゾーニング導入後に交通事故やそれによるけが人が12%増加し、死亡事故も13%増えた。さらに、主要観光地であるバンコク、プーケット、チョンブリーでは事故による死亡率が22%に達し、飲酒運転の摘発件数も115%増とほぼ倍増したという。いずれもゾーニング導入前の前年との比較。

 一方、経済効果は限定的だった。対象外の県の中には、旅行者数や収入がむしろ倍増した例も報告されているもよう。ポンテープ所長は「規制緩和は経済成長の近道のように見えるかもしれないが、公衆衛生と安全の観点からは『行き止まり』であることが証明されている」と述べている。

ポンテープCAS所長 写真:プリンス・オブ・ソンクラー大学医学部(PSU)ホームページより

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