バンコク都庁が今後5~7年で排水トンネルや貯水施設を整備、洪水対策強化で1000億バーツ超

【タイ】バンコク都庁(BMA)は今後5~7年で、少なくとも1000億バーツ(4700億円相当)を投じる洪水対策計画を策定した。排水路の維持管理に加え、運河改修、排水トンネル建設、貯水施設の整備を進め、タイの経済中枢である首都圏の浸水被害軽減を目指す。

 計画策定の背景には、近年の洪水による経済的損失や都民生活への影響がある。9月下旬からの大雨・洪水では、バンコク東部で複数方向から流入する水の排水が追いつかず、一部地域で少なくとも1週間にわたって冠水・浸水が続いた。

 短期対策として、都庁は総延長5000キロメートル超の排水管・排水溝の浚渫(しゅんせつ)作業を来年雨期前に実施する。水流の監視、小規模運河から主要運河への排水による水位調整、水門や排水ポンプの点検を進めるほか、大型ごみなど排水を妨げる障害物の除去を行う。都民に対しても、自宅周辺の水路にごみや雑草を放置しないよう協力を求めていく。

 中長期対策では運河の排水能力向上に重点を置く。特にホックワーサーイラーンとプラウェートブリーロムのそれぞれの運河を結ぶ南北方向の排水網の強化を進める。バンコクには2100本ほどの運河があり、このうち30本ほどが主要運河、1980本ほどが支流運河に分類される。計画では運河の掘削や拡幅、蛇行区間の改修を通じて水の流れを改善する。

 自然河川や運河の拡幅に加え、河床や運河底のコンクリート化を進め、排水能力向上と浸食・護岸崩落の抑制を図る。ただ、予算上の制約や、運河の自然環境維持を求める都民からの反対も課題となっているという。

 また、主要運河を占拠している建築物への対応も進める。これによってラマ9世排水トンネルやバーンスー排水トンネルを含む7本の大規模排水トンネルへの導水能力向上を目指す。新たに6本の大規模排水トンネルの建設を加速させる。

 さらに、貯水能力の強化も進める。洪水時に一時的に水を貯留する「モンキーチーク」構想に基づき、2027年までに貯水施設を45カ所に拡大し、総貯水容量を1400万立方メートル超とすることを目標に掲げる。現在38カ所の貯水施設があり、総容量は1371万2305立方メートル。2022年以降、特にバンコク東部で施設の拡張や機能向上を進めており、新たに7カ所を整備して29万立方メートルの容量増加を見込む。

 モンキーチーク構想はもともと、故ラマ9世(プーミポン前国王)が提唱した治水プロジェクト。サルが食べ物をほお袋に一時的にため込み、必要に応じて取り出す習性に着想を得たもの。

 今回の大雨で洪水被害が甚大だったミンブリー区、ノーンジョーク区、ラートクラバン区などのバンコク東部地区は低地に位置し、周辺から流入する雨水が集まりやすい。とりわけラートクラバン区は盆地状の地形のため、大雨時の排水が難しいとされる。

 都庁は、スワンナプーム空港やキングモンクット工科大学ラートクラバン校、都市鉄道網などの整備によって東部地域の都市化が進み、土地需要が高まっていると説明。新都市計画案では、運河沿いや東部地域を中心に治水機能を維持できる土地を保全しながら、地域ごとの条件を踏まえた土地利用を進め、洪水対策、都市開発、都民生活の質の向上の両立を目指すとしている。

ラートクラバン区内で洪水被害(9月28日) 写真:newsclip

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