【タイ】深南部ナラーティワート県とパッターニー県の計6カ所で3月8日夜、爆破や銃撃などの同時テロが発生、3人が死亡、少なくとも13人がけがをした。事件の発生を受け、ペートーンターン・チナワット首相が地元治安部隊に警戒強化を指示。ナラーティワート県と国境を接するマレーシアは自国民に対し、渡航自粛の注意喚起を発出した。
最初の事件は午後7時10分頃、ナラーティワート県スンガイ・コーロック郡で発生。ピックアップトラックの荷台に乗って郡役所にやってきた黒づくめの複数人が、建物にいきなり爆発物を投げ込み、警備に当たっていた自警団兵士に向けて小銃を乱射した。これにより兵士2人が死亡、民間人を含む少なくとも11人がけがをした。
午後7時半前には、同郡内の国鉄線路の近くおよびショッピングセンター前の2カ所で爆発物が爆発した。隣のスンガイ・パーディー郡では電柱が破壊されるなどの爆破事件が発生し、隣県パッターニー県サーイブリー郡でも陸軍レンジャー部隊が銃撃を受け、兵士1人が死亡、居合わせた地元村長補佐の2人がけがをした。さらに日付をまたいだ9日午前3時頃、ナラーティワート県ウェーン郡で電柱を破壊するテロが発生。いずれもマレー系分離独立派組織の犯行と思われる。
タイ深南部と呼ばれるパッターニー、ヤラー、ナラーティワートの3県と隣接するソンクラー県3郡では以前より、分離独立を大義名分とするテロが続いている。マレーシア国境という土地柄、マレー系のムスリムが住民のほとんどを占めるため、一連のテロも「イスラムテロ」と報道されるが、イスラム的な時間感覚でテロが行われるものの宗教的な争いはない。本質は単純な利権争いと見られる。
ヤラー県では3月6日、手製らしき爆発物が道路に投げ込まれるテロが発生し、民間人6人がけがをした。イスラム教徒の断食月であるラマダンが3月1日に始まり、世界各国でラマダンに合わせたテロの発生が警戒されているが、今月に入ってからのタイ深南部でのテロは、タクシン・チナワット元首相への当て付けと見て取れる。
タクシン元首相は2月23日に深南部3県を訪問、首相在任中にテロ激化を引き起こしたことに謝罪の意を示したが、当地での同元首相への嫌悪感は強く、またもやテロを引き起こして犠牲者を出すこととなった。そもそも同元首相の深南部訪問はマレーシアの意向で、自発的ではなかったと報じられている。
マレーシアは3月9日、自国民に対してタイ深南部への渡航自粛の注意喚起を発出した。スンガイ・コーロックはマレーシアと国境を接し、週末や連休には多くのマレーシア人がナイトライフを楽しむために訪れる。
ナラーティワート県広報局フェイスブックより