タイ政府、地政学リスクに備え「海底ケーブル主権」強化へ NTを中核に国際通信の安全確保急ぐ

【タイ】政府は、国際通信の大半を陸上の国境ルートに依存している現状を「重大な地政学リスク」と位置づけ、海底ケーブルの整備と国家による統制強化を進める方針を示した。ブンヤティダー・ソムチャイ副デジタル経済社会相が、国営通信会社ナショナルテレコム(NT)からの報告を受け、戦略転換を明らかにした。

 タイの国際インターネット通信は現在、8割が陸上の越境ネットワークに依存し、海底ケーブルは2割にとどまる。陸上ルートは周辺諸国との国境地帯を通過するため、地域紛争や緊張の高まりによって一瞬で国際通信が遮断される恐れがある。さらに、既存の海底ケーブル7〜8本のうち、損傷などでフル稼働しているのは2〜3本に過ぎず、バックアップとしても脆弱だという。

 海底ケーブルは国際データや金融取引の95%以上を担う不可欠なインフラであり、国家の安全保障、行政、経済活動の基盤となる。デジタル経済社会省は「海底ケーブル主権」の確立により、外国勢による通信傍受、物理的破壊、紛争時の通信遮断リスクを最小化できると強調している。

 巨額の投資が必要になるものの、長期的なサイバー安全保障の観点から不可欠と位置づける。南部ソンクラー県やサトゥーン県に点在する海底ケーブル陸揚げ局については、国立公園内に設置されている施設も含め、国家管理の下で再編・集約する方針。

 政府はNTを国家デジタルインフラの中核に据え、各省庁・公的機関が個別に構築してきた重複ネットワークを整理する。現在、タイ発電公社(EGAT)、地方電力公社(PEA)、タイ国鉄(SRT)などが独自の通信網を保有しており、非効率の原因となっている。政府はNTを国家の統合通信網および通行権管理の唯一の主体とする政策を検討している。

 NTは、アジア域内の国際海底ネットワーク「アジア・ダイレクト・ケーブル(ADC)」の運用を開始。総延長9988キロの最新ケーブルで、中国(香港・広東)、日本、フィリピン、シンガポール、ベトナム、タイを結ぶ。5G、AI、クラウド、ビッグデータなど次世代の大容量通信を支える設計で、タイをデジタル産業の地域ハブとして強化する役割を担うという。

 ほか、6件の重点プロジェクトを提示しており、その一つである公共安全モバイルネットワーク(PSMN)4G/LTE第1期(事業費18億9000万バーツ、95億円相当)は、国家放送通信委員会(NBTC)による850MHz帯の承認待ちとなっている。

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