【タイ】新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)とタイ・エネルギー省による電力系統運用の低炭素化・高度化を目的とした実証事業で、委託先である日立製作所は26日、タイ発電公社(EGAT)と共同で推進している電圧・無効電力オンライン最適制御システム(OPENVQ)の本格実証に向けて、システムの構築を完了し、実証運転を開始したと発表した。
実証運転では、EGATが所有するタイ東北部の送電系統を対象に、OPENVQとEGATが運用する給電指令所の電力系統の監視と制御を行うSCADAシステムを連携させた。これにより送電ロスを抑制し、電力系統運用の高度化・効率化を目指す。
また、これまでのモニタリングデータを分析し、約1000トンの二酸化炭素(CO2)排出量の削減効果を確認した。今後は、2国間クレジット制度(JCM)の合同委員会に対してプロジェクト登録を行い、2023年12月までのモニタリング結果をもとに、第3者機関の検証を経て、CO2の排出量をクレジットとして発行することを目指す。
タイでは近年、経済発展にともなう電力需要量の増加により、送電系統の電力損失(送電ロス)の抑制が課題となっている。また、タイ国内の主要な電源が火力発電所であることから、天然ガスなどの化石燃料使用量が増加し、環境負荷の低減を考えた電源構成の実現に向けて再生可能エネルギーの導入が求められている。
実証事業を実施するタイ東北部では、隣国からの電力購入や、水力および太陽光発電所などの新たな電源の新設が検討されている。これらのさまざまな電源が電力系統に接続された場合、送電系統の電圧を最適化する仕組みがないため、安定的な電力供給と送電ロスの抑制の両立が難しいという課題がある。
こうした背景のもと、NEDOとタイ・エネルギー省は電力系統運用の低炭素化・高度化を目的とした実証事業を実施することに合意した。委託先の日立とEGATは、EGATがタイ東北部に所有する送電系統を対象に、OPENVQを導入し、2月から、OPENVQをSCADAシステムと連携させた実証運転を開始した。これにより、EGAT運用者を介さずにSCADAを経由してEGATの電力系統の自動制御が可能となった。