【タイ】資金難が表面化しているタイのゼネコン(総合建設会社)大手イタリアンタイ・デベロップメント(ITD)が下請け業者や建設作業員への支払いを一部遅延していることが明らかになり、タイ労働省労働保護福祉局は12日、調査を開始したと発表した。
労働省によると、ITDはタイ国内で外国人労働者3000〜4000人を含む2万人以上を雇用している。
タイのニュースサイト、MGRオンラインによると、ITDは現在、バンコクとタイ東北部の中心都市ナコンラチャシマを結ぶタイ中国高速鉄道(総延長251キロ)の一部区間やタイ国鉄(SRT)の複線化、バンコク首都圏の高速道路、地方の国道などを施工中。資金不足でこうしたインフラ事業が滞ることが懸念されている。
ITDは2020〜2022年に約60億バーツの損失を出し、資金繰りが悪化した。2023年9月末時点で、資産総額1193.7億バーツ、負債総額1076億バーツ。2023年1〜9月期は売上高526.7億バーツ、最終利益3.8億バーツだった。
今年1月に社債の償還期限を延期した。2月には東北部ウドンタニ県の苛性カリ鉱山プロジェクトの売却交渉を進めていることを明らかにした。2023年の決算報告を期限内にタイ証券取引所(SET)に提出せず、SETが3月1日、売買を停止した。
ITDは中国系タイ人のカンナスート(陳)家とイタリア人のサルベージ技術者が1958年に設立した。バンコクの高架鉄道BTS、スワンナプーム国際空港などの建設を手がけ、バングラデシュ、カンボジア、ラオス、インドネシア、ミャンマーなどでも事業を展開する。
オーナー一族のプレームチャイ・カンナスート社長は野生保護区での密猟で実刑判決を受け、2021年12月から2023年10月まで服役した。