鈴木 孝子 氏 日本語科主任・日本人部主任(Head of Japanese)
「本人」「保護者」「学校」の三者で決める入学
「世界で通用する人間」になる強い意志の尊重
在留邦人の増加に伴い、タイでもインター校への入学を希望する日本人が増えてきた。中学からの中途編入も少なくない。長期の海外生活なら子供はインター校に、という選択肢はもっともだが、「英語を学ばせたい」「楽しそうだから」といった理由だけでは決して良い結果につながらず、子供が苦しむだけとなる。インター校は、見学を重ね、「子供」「保護者」「学校」が三つ巴で話の場を持ち、「この学校で大丈夫」「この学校に『縁』がある」と確信をもって入学させたい。
日常会話と学習言語は別もの
トレイルは1966年開校の英国式カリキュラムを採用するインター校。日本の幼稚園年長に相当する6歳からYear 1(小学校1年)が始まり、日本の高1のYear 11で英ケンブリッジ大学による国際中等教育修了証取得試験(IGCSE)を実施、合格すればタイ国内の大学への進学が可能となる。
海外の大学に進路を定める場合は、IGCSEに合格した後にYear 12およびYear 13を続ける。同2年間は、Aレベルと呼ばれるCambridge Advanced Certificate in Educationの試験を受けるためのコースを履修する。
学習言語はもちろん英語。学問を修めるための英語であり、日常会話のそれとは全く異なる。「せっかくの海外生活なので英語を学ばせたい」というだけの理由であれば、語学学校で修得する英語の方が効率的だ。
高学年の生徒が英語に慣れていない状態で中途編入する場合、その能力を早急に引き上げなければならず、負担はかなりのものだ。そのような生徒たちのために英語集中クラスというものがあるが、短期間で一般授業に参加できるほどの能力を身に付けるのは至難の業。1年留年するぐらいの覚悟が必要となってくる。
英語集中クラスから段階を経て一般課程のMain Streamに進むわけだが、本人にとってはプールでの練習から大海に泳ぎ出るようなもの。教師やスタッフが本人の性格を見極め、反応を確認しながら適切に授業に参加させていく。学習言語としての英語はそのぐらいデリケートであり、就学を左右する。
また、ある程度の歳を経た子供がインター校に入学する際、日本の学校での成績が優秀であればあるほど、落ち込みが激しくなる傾向がある。英語が分からないという理由だけで、これまでの自信が打ち砕かれるからだ。子供より保護者の意向が強かったことによるインター校入学だとしたら、なおさら。このような落ち込みは英語能力の上昇に比例して解消されていくが、気を付けて見守っていく必要がある。
入学後に変わりやすい希望進路
インター校への入学は、本人の希望進路、保護者の思い入れ、海外駐在年数などを見込んで総合的に判断するのが理想的だが、この希望進路というのが意外と変わりやすい。当初は海外の大学を希望していたのがいつの間にか日本になったり、その逆もあったりする。理由もさまざまだ。インター校に入学して、それまでとは異なる本当に学びたいものが見つかるときもある。学力は十分でも、そのほかの条件を満たせないという事例も見かける。日本の大学の場合、帰国子女枠の条件がいつのまにか変わってしまうということもある。
本校では前述のとおり、最終の2学年ではAレベルを採用している。志望大学の入試に向けて3―4科目に絞って勉強する、英国で6th Formと呼ばれる特別な2年間だ。Aレベルの特徴は、得意とする科目に専念でき、大学での専攻科目に直結させられること。例えば一般的に知られる国際バカロレア(IB)は語学を加えた6科目と論文を必須とし、幅広く優秀な成績を要求する。どちらを望むかは本人次第だが、英国で長く採用されるAレベルは、科目を限定する分だけ非常に深く掘り下げる授業方法として評価されている。
また、米国をはじめ世界の多くの大学は、成績のみならずアクティビティを評価対象にしている。学業のみならず諸活動に率先して参加し、相応の実績を収める人材を高く評価する。本校も生徒が自ら企画して実践するアクティビティ、スポーツ、ボランティアといったものを奨励している。
インター校からの進路は選択肢が非常に幅広い。日本の帰国子女枠も千差万別で今後変化していくことも考えられるが、海外に住む日本人にとって有利な面は多い。
見学と話し合いで決まる入学
本校も国際人を目指す日本人生徒が年々増え、日本人教師3人が常勤し、このほど「日本部」が新設された。日本人生徒に対しては、見学・入学から進路相談・卒業まで、同部が一貫してサポートする。
日本語教育にも力を入れている。Year 1からYear 6までは、課外授業として週2回の日本語補習を、Year 3からYear 6まではInter Cultural Studyとして日本、中国、フランスの言語、文化、伝統を学ぶ課程を、Year 7からは国語および外国語としての日本語の課程を実施している。
インター校なので、学校から保護者への通知や報告は当然英語だが、確実な伝達を必要とする内容は日本語で送信している。PCや携帯端末での送信でいたって合理的だ。
本校は学力や英語能力だけで入学可否が決まらない。英語能力が決して高くなくとも、本人に合う学校と判断されれば入学となる。合否は常にケースバイケースだ。見学してもらい、「本人」「保護者」「学校」が話し合いの場を持ち、「確信」を得ることに重きを置いている。その確信が得られなければ、何度でも見学に来ていただき、話し合いを重ねる。何よりも大切なのは、「(本校に)入学したい」という心からの希望と、「世界で通用する人間になる」という強い意志だ。
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