タクシン元首相、15年ぶりにタイ帰国 家族、支持者ら出迎え

【タイ】2008年から国外に亡命していたタクシン・チナワット元首相(74)が22日午前9時ごろ、プライベートジェット機でバンコク郊外のドンムアン空港に降り立ち、15年ぶりにタイに帰国した。

 空港では3人の子ども、支持者らの出迎えを受け、ターミナルの出入口にあるワチラロンコン国王夫妻の肖像画に拝跪(き)礼した。

 タクシン氏は2008年以降に汚職などで計10年の実刑が確定している。空港から最高裁判所に連行され、その後、収監される。

 タクシン氏が事実上の党首とされるプアタイ党は21日、タクシン氏の宿敵である王党派政党と連立政権を樹立すると発表した。国王による恩赦でタクシン氏の刑期短縮を図るとみられる。

 タクシン氏は自宅があるドバイから、同じく国外亡命中の妹のインラク・チナワット前首相(56)とシンガポールに飛び、シンガポールでインラク氏と別れ、タイに向かった。タイの公共放送タイPBSによると、タイに向かうプライベートジェット機には元妻のポジャマン氏らが同乗した。

〈タクシン・チナワット〉1949年、タイ北部チェンマイ生まれの客家系華人。中国名は丘達新。警察士官学校を卒業後、米国に国費留学し、刑法学博士号を取得。帰国後、警察に勤務するかたわら、官公庁へのコンピュータリース、不動産開発などを手がけ、1987年に警察中佐で退職。その後、携帯電話サービス、通信衛星などを展開するタイ通信最大手チン・グループを育て上げた。1998年に政党を設立。地方、貧困層へのばらまき政策を掲げ、2001年の下院総選挙で大勝し首相。2005年の総選挙も圧勝、首相に再選された。王党派との対立が深まり、2006年9月の軍事クーデターで失脚し、公職追放処分を受けた。2007年末の総選挙でタクシン派が勝利したため、2008年2月に帰国。8月に出国し、不在中の10月、首相在任中に妻が国有地を競売で購入したことで禁錮2年の実刑判決を受けた。その他2件で有罪が確定し、刑期は計10年となった。2008年の有罪判決以来、一度もタイに帰国せず、主にドバイに滞在していた。タイの王党派政権は身柄引き渡しを求めてきたが、諸外国はこれに応じず、タクシン氏は有罪確定後も、欧州、米国、日本、シンガポールなどを訪れている。妹のインラク前首相も2014年の軍事クーデターで失脚、国外に亡命し、タクシン氏のもとに身を寄せた。チナワット家のタイ国内の資産約760億バーツはクーデター後に凍結され、タイ最高裁が2010年2月、不正蓄財だとして、このうち464億バーツの国庫没収を命じた。米経済誌フォーブスがまとめた2023年版のタイ長者番付で、タクシン氏は資産総額約21億ドルで13位だった。

 

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