【タイ】タイのメディアがサイアム商業銀行(SCB)調査部門「SCB経済インテリジェンスセンター(EIC)」の分析として伝えるところによると、タイの失業率は依然として低水準にあるものの、雇用市場には複数の面で弱含みの兆候が出ている。2026年上半期の失業率は0.94%で前年同期の0.90%から微増、失業者数はおよそ3万5000人増の39万7000人となり、前年同期比9.8%増となった。
EICによると、社会保険第33条(民間企業の正規雇用者)の失業率は2.07%から2.37%に上昇し、全体の失業率の伸びを大きく上回った。企業が解雇に踏み切り始めている可能性があるという。若年層(15~24歳)の失業率は5.14%と依然高く、全体の5倍以上に達する。EICは、労働者の技能と産業側の需要が一致しない「スキルミスマッチ」が構造的な問題として残っていると指摘する。
就業時間の不足も広がっている。週35時間未満の就業者はおよそ40万人増え、前年同期比7.4%増となった。農業で週0~20時間、非農業で週0~24時間の「準失業者」も4.9%増の333万人に達した。形式上は就業していても、十分な労働時間を確保できず、生産能力を発揮できない層が増えている。
平均週労働時間は42.57時間から42.42時間に減少し、正規雇用者で0.2%減、自営業者で0.5%減となった。EICは「労働需要の弱まりが特定の層に限らず広範に及んでいる」と分析。企業は解雇に踏み切る前に残業削減や労働時間の短縮を行う傾向があり、これらは悪化の初期シグナルとされる。実際、2026年上半期の企業閉鎖件数は前年同期比12.5%増加した。
賃金も弱含んでいる。残業・賞与を含む月額賃金は1万6363バーツから1万6300バーツに0.4%減少した。正規雇用者の賃金は0.9%増えたものの、前年の約3%増から大きく伸びが鈍化した。一方、全就業者の3分の1を占める自営業者の収入は2.2%減と大幅に落ち込んだ。
物価を考慮した実質賃金も悪化している。2026年第2四半期の実質賃金指数(2019年=100)は96.8まで低下し、コロナ禍以降で最も低い水準となった。EICは「家計の購買力はコロナ前の水準に戻らないどころか、今年再び弱まっている」と指摘する。
雇用環境の弱さは、家計消費や債務返済能力にも影響する。所得の回復が遅れると家計は支出を抑え、国内需要に依存する中小企業の売り上げが減少する。企業は賃上げや採用を控え、労働時間を削減し、家計所得がさらに弱まる悪循環が生じる。
2026年第1四半期の家計債務残高はGDP比85.9%と6年ぶりの低水準となったが、EICは「所得の弱さによる借入抑制や金融機関の与信厳格化が主因で、家計の健全化による改善ではない」と分析する。家計債務残高自体は0.5%増加しており、日常消費向けの借り入れが中心だった。質屋の貸し付けは18.3%増え、銀行以外の柔軟な資金調達に頼る家計が増えている。
EICは、雇用喪失者への一時的な所得支援、職業訓練、効果的な職業紹介の強化、地域間移動の障壁緩和などを政策課題として挙げる。また、外国直接投資(FDI)が国内雇用や技能移転に確実につながるよう、投資優遇策を労働力育成や技術移転と連動させる必要があるとした。



























